なぜか18世紀イギリスで死亡率が急に減少
18世紀イギリスの人口統計データには長い間、研究者たちにとって大きな謎がありました。
それは1761年から1834年の間に、年間死亡率が急激に減少に転じていたことです。
当時はまだ賃金が上がっておらず、労働者たちの生活水準もほぼ上昇していません。
加えて、産業革命の高まりとともに多くの労働者が都市部に押し寄せたため、町の衛生状態もかなり低いものでした。
それなのにどうして死亡率が下がったのか、研究者は大いに疑問だったのです。
その一方で、コロラド大学ボルダー校の経済学者であるフランシスカ・アントマン(Francisca Antman)氏は「18世紀の紅茶の普及にその要因があるのではないか」と予想しました。
というのも、当時のイギリスでは水質の悪さから「赤痢」のような危険な下痢性疾患が流行し、死亡者が続出していたからです。
赤痢は汚染された水に潜む赤痢菌への感染によって発症しますが、それらは水の煮沸によって死滅させることができます。
つまり紅茶が普及すれば、人々は自然と煮沸された安全な水を飲むことになり、赤痢も減少すると考えられるのです。
そこでアントマン氏は18世紀イングランドにおける人口統計データをもとに分析を行いました。