古代のナビゲーション機器「アストロラーベ」とは?
古代のナビゲーション機器「アストロラーベ」とは? / Credit:Wikipedia Commons_アストロラーベ
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古代のナビゲーション機器「アストロラーベ」 (3/3)

2024.01.02 Tuesday

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星の位置を示すパーツが製造年代を明らかにする

エマニュエル・ダヴースト氏は、フランスの都市トゥールーズにあるミディ=ピレネー天文台(OMP)に所属する天文学者です。

最近彼は、同じくトゥールーズにあるポール・デュピュイ美術館に保管されたアストロラーベを分析しました。

ポール・デュピュイ美術館にあるアストロラーベ
ポール・デュピュイ美術館にあるアストロラーベ / Credit:Emmanuel Davoust(OMP), arXiv(2023)

彼が特に着目したのは、アストロラーベのパーツの1つであり、恒星の位置を示す「リート」です。

このリートには、34個の針があり、同じ数だけの恒星の位置を示しています。

そしてなんと彼は、リートの分析により、このアストロラーベがいつ製作されたのかを明らかにすることができました。

リートにある34個の針先が恒星の位置を示す
リートにある34個の針先が恒星の位置を示す / Credit:Emmanuel Davoust(OMP), arXiv(2023)

製造年が彫られているわけでもないのに、どうしてそのようなことが可能なのでしょうか?

地球の自転軸は常に同じ方向を向いているわけではなく、下図のように約23.4°傾いています。

地球の歳差運動
地球の歳差運動 / Credit:国立天文台 天文情報センター_歳差ってなに?

これを歳差運動と言いますが、この運動により、「春分点(すべての恒星の位置の基準となる点)」の位置は定期的に変化します。

また恒星自体も、固有運動と呼ばれる変化により、非常にゆっくりとその位置(天体を観測した際の座標値)を変えています。

つまり、時間の経過により恒星の座標は変化しており、この違いが特定のアストロラーベがいつ製作されたかを知るカギとなるようです。

今回、ダヴースト氏は、1400年から1700年の間の恒星の座標を50年ごとに算出し、ポール・デュピュイ美術館にあるアストロラーベの34点の座標と比較しました。

その結果、このアストロラーベが作られたのは1550年である可能性が高いと分かりました。

このように、天文学を用いた歴史調査が可能だという点も、アストロラーベが持つ魅力の1つなのです。

もし、古代のナビゲーション機器である「アストロラーベ」を目にする機会があるなら、ぜひ、その精巧さやデザインの美しさ、そして天文学における歴史の深さを感じ取ってみてください。

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