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biology

「左右非対称」なほど環境適応能力が高くなる?遺伝しない変異と進化の関連 (2/2)

2024.02.01 Thursday

前ページ動物の体は発育時の「ゆらぎ」により非対称になる

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左右が非対称なのは「生き抜く力」と関係するかも!?

研究チームは、オナジショウジョウバエという種を用いて環境変化にどう反応するかを調べるため実験を行いました。

研究者らはまず、千葉大学キャンパス内でオナジショウジョウバエを捕獲し、いくつかの系統(家系)を作成しました。そして、それぞれの系統を20世代にわたって繁殖させました。

本研究では、6つの異なる系統を選び、それぞれを7つの異なる環境条件下で飼育しています。これには、栄養状態、光と暗闇の周期、温度などが含まれます。

そして、それぞれの翅の形態を詳しく調べるため、機械学習プログラムを使って翅の12箇所にマーカー(目印)をつけ、その位置を記録。この位置の違いを分析することで、翅の形態の変化を詳しく調べたのです。

分析の結果、オナジショウジョウバエの翅の形や大きさは、育った環境によって変化することがわかりました。

左右非対称になりやすい系統は、環境に応じて変化しやすいことがわかった。
左右非対称になりやすい系統は、環境に応じて変化しやすいことがわかった。 / Credit: Saito, K., et al.

たとえば、高温環境で育ったハエは、低温環境で育ったハエよりも小さい翅を持つ傾向がありました。

また、環境によって翅の形態が変化する程度(すなわち表現型可塑性の能力)は、系統により異なることもわかりました。

つまり、ある系統は環境からの影響で見た目が大きく変わりやすいのに対し、ほかの系統にはあまり変わらないものもあるということです。

さらに、表現型可塑性の能力が高いハエは、翅の左右非対称性(発生ノイズの程度)が高いという関連もみられました

これについて研究者は、「左右対称性の崩れやすさは、変動環境下での生存のしやすさとも関係する可能性があります」と述べています。もしかしたら、左右がアンバランスな生き物の方が、変化する環境において生き延びやすいのかもしれないというわけです。

左右非対称の程度と表現型可塑性の程度の関係。
左右非対称の程度と表現型可塑性の程度の関係。 / Credit: Saito, K., et al.

「左右非対称だと、生き延びる力が強いのかもしれない」というのは、ちょっとした驚きですね。

2019年に発表された論文では「左右対称性は、人の身体的魅力を高めるものではない」と結論づける内容が示されています。人の魅力は個人の好み、文化的な影響、社会的な基準など多くの要因に依存するため、左右の違いは魅力になっている可能性すらあるというのです。

結局のところ、左右のバランスはちょっと崩れているくらいが、自然の中では好ましいのかもしれません。もし顔や身体の左右のバランスが悪いという問題に悩んでいる人がいるとしたら、その「非対称性」は、あなたの「生命としての強さ」を示すもなのかもしれません。

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