気候変動と地球軌道の変化は相関している
今から5600万年前、地球は恐竜が滅んで以降、最大の全球的温暖化に見舞われました。
この時期、地球の平均気温は5~8℃ほど上昇し、陸上では温暖化によって降水量が劇的に増大しました。
軌道モデルをもとにした研究では、当時の地球の軌道が特に偏心したことを示しています。
つまり何らかの原因で地球の「太陽の周りかた」が変化してしまい、劇的な気候変動をもたらした可能性があるのです。
地球の離心率変化の原因の1つに、他の恒星系との接近が考えられます。
太陽系の近傍には複数の恒星が存在しており、ときおりニアミス(近接遭遇)が起こります。
2018年に行われた研究では、太陽から1パーセク(3.26光年)以内を他の恒星が通過する頻度は、100万年あたり20回ほどであると報告されました。
また今後50億年あたりの近接遭遇の影響を計算すると、太陽系から1つ以上の惑星が失われる可能性が0.5%ほどあることが示されました。
これはつまり他の恒星との異常接近によって惑星にある種のフライバイが発生し、太陽系から吹き飛ばされる可能性があるのです。
あるいは確率は僅かなものの、接近した恒星が惑星を飲み込んでしまう可能性も考えられます。
このような劇的な破壊が起こらないにしても、恒星との近接遭遇は惑星軌道に劇的な影響を及ぼします。
具体的な近接遭遇の影響も調べられており、海王星が現在の離心率に変化した原因のおよそ3分の1は、過去の恒星との接近が原因であると考えられています。
地球だけが、このような近接遭遇による軌道変化や続く気候変動から無関係であるとは考えられません。
過去に行われた研究でも、地球の過去の気候変動が地球の離心率の変動と相関していることが示されています。
地球の離心率の変動は主に、太陽系内部にある木星や土星のような巨大惑星の影響を受けており、それらはミランコビッチサイクルと呼ばれています。
しかし他の恒星の近接接近が起きた場合、ミランコビッチサイクルとは異なる「軌道の不確実性」の増加が起こるはずです。
これまでにも過去の惑星軌道の研究はシミュレーションなどによって行われてきましたが、他の恒星の近接接近はあまり考慮に入れられていませんでした。
そこで今回、惑星科学研究所とボルドー天体物理学研究所の研究者たちは、最近に起きた近接遭遇が、地球の軌道変化にどのように影響を与えたかを調べることにしました。