一夫一妻制の絆はセックスの後に結ばれる
人間にとっての絆は、友人を作ったり結婚生活を送るなど、自分以外の他者との関係を強固にするために重要な働きをしています。
近年の研究では、絆を結んだ相手との生活は、ストレスや苦しみを緩和し、病気の罹患率や死亡リスクを下げる効果があることが判明しています。
心を結びつける絆は、動物たちの生存競争においても有利になります。
絆を結んだ個体間では、家族の世話や縄張り防衛を協力して行うようになり、単独で行う場合に比べて著しく成功率が上がるからです。
そういう観点からみれば、絆とは、気まぐれや浮気によって、優秀な相手を自ら手放さないようにする、本能の「足かせ」と考えることもできるでしょう。
絆の話で、利益とか足かせという言い方はやめてよと思う人もいるかもしれませんが、実際自然界の中では絆が一つの生存戦力として機能しています。
たとえばプレーリーハタネズミなどの種では、オスがメスを独占する能力の高さが、オス親としての能力や巣の防衛能力の高さを予測する因子として機能しています。
つまり絆を結ぶ前に、優秀な相手を選ぶ本能レベルの「打算」が働いているのです。
続く絆の形成も、やはり本能的行動であり、脳内にそれを可能とする仕組みが事前に組み込まれていると考えられます。
(※あらゆる動物は本能に従う行動を行うと報酬系から快楽という「ご褒美」を貰えます。これまでの研究でも、絆を結ぼうとする行いは、報酬系を起動させることが知られています)
そこで今回、テキサス大学の研究者たちは、絆形成の前後でプレーリーハタネズミの脳がどのように変化するかを、調査することにしました。
幸いなことに、一夫一妻制をとるプレーリードックの場合には、「発情➔交尾➔絆の形成➔安定的な関係」という、極めて人間に近しい形がとられています。
ただ絆形成の根底にどんな脳回路が存在し、何が脳回路を活性化させるかは、まだ不明な部分が多くなっています。
一夫一妻制の動物たちで結ばれる絆とは、何がキッカケとなるのでしょうか?