乾季シーズンは卵の状態で乗り切る!
交尾を終えたオスはすぐに死んでしまいますが、メスには「産卵」という最後の大仕事が残っています。
ラボードカメレオンは乾燥した環境にとても弱いため、乾季を生きた状態で生き抜くことができません。
そこでメスは4月〜10月の乾季を乗り切るための卵を産んで、湿った地中に埋めておくのです。
アメリカ自然史博物館(AMNH)の爬虫類学者であるヴァレリア・ファブリ=ケネディ(Valeria Fabbri-Kennedy)氏とクリス・ラックスワージー(Chris Raxworthy)氏は「メスは産卵に全力を注いだ後は体力も資源もほとんど残っていないため、わずか数時間で死んでしまう」と説明します。
その死にゆく時間の中でメスたちは最後のメッセージを発するかのように、目まぐるしく変わる見事な体色変化を見せます。
下の動画にはメスの体色が変化するタイムラプス映像が映されています。
カメレオンの皮膚には黒・黄・青といった色素細胞が存在し、それを伸ばしたり縮ませたりして光反射の仕方を変えることで、体色変化を起こします。
カメレオンが色を変えるのは気分や温度、光、湿度などが要因です。
ラボードカメレオンのメスは死にともなう生理的反応を通じて、目まぐるしい体色変化を起こしていると考えられています。
こうして大人たちが全滅した後、残された卵は最大で8〜9カ月の潜伏期間を経て、再び新しい命として地上に姿をあらわします。
彼らが生涯の大半を卵として過ごすのは、生存には適さない熱くて乾燥した時期をスキップするためなのです。
この絶滅状態の期間はマダガスカルの雨季の長さによって多少前後しますが、基本的には親が子供に会うことはありません。
しかしながら子供たちは親から何も教わらなくても、ちゃんと使命を全うして、次の世代に命のバトンを繋いでいるのです。
卵を守り、生まれた子供を育てる存在がすべていない状態で次世代に命を繋ぐというのは、かなり大胆で勇気のいる戦略ですが、彼らはこの方法で適さない環境でも長く生存しているようです。
死ぬ光景はなかなか壮絶ですね。
土中に卵を産み、乾燥に弱く、数か月しか生きられないとなると、(乾燥した草原などで区切られた)生息域を分散する力が弱そうにみえます。干ばつや森林火災など、多様なかく乱を切り抜けて生をつなげているのはすごいですね。
他に、寄生虫や感染症の世代間感染からエスケープするとか、乾燥期は餌資源が乏しいとか、寿命の長い近縁種と種間競争が激しくすみ分け的な生活史をとってるとか、乾季は大型動物による捕食圧が溜まるとか・・・いろいろな要因のポジティブにもネガティブにも利いているやもしれませんね。