プラセボ効果には「悪魔の双子」がいた
研究者たちは長い間、患者による「治療への期待値」とその後につづく「治療結果」の間に深い関連性があることに気づいていました。
その最たる例が一般にもよく知られている「プラセボ効果」です。
具体的には、何の薬効成分も含まない偽物の薬(プラセボ)を治療薬と称して患者に飲ませることで、本当に病状の改善が生じる効果をいいます。
特に主治医から「これは本当によく効く薬ですから」と言われるほど、プラセボ効果は高くなることがわかっています。
これは患者自身が「この薬を飲めば、病気が治るんだ」という思い込みや安心感を抱くことで、治療への期待値が高まり、患者本人の自然治癒力が上がるためです。
では、プラセボ効果のようなポジティブな作用があるのであれば、その逆のネガティブな作用もあって不思議ではないでしょう。
実際にこの作用は「ノセボ効果(Nocebo effect)」という言葉で知られています。
しかしノセボ効果については、学術的な研究がほとんど進んでおらず、決定的な医学論文も出ていません。
そんな中、スウェーデン・ウプサラ大学(Uppsala University)の医学研究者であるシャーロット・ブリーズ(Charlotte Blease)氏は今月19日に、自身の新刊『The Nocebo Effect: When Words Make You Sick(=ノセボ効果:言葉があなたを病気にするとき)』を出版しました。
ブリーズ氏によれば、「ノセボ効果が学術書で取り上げられるのは今回が初めて」といいます。
では、プラセボ効果の”悪魔の双子”と称される「ノセボ効果」とは、どのように注目され始めたのでしょうか?