ノセボ効果は「コロナワクチン」がきっかけで注目され始めた
ブリーズ氏は「ノセボ効果は非常に新しい研究分野であり、たとえ古くから記録があったとしても、世間的に注目され始めたのは新型コロナウイルスのパンデミックがきっかけだったでしょう」と話します。
同氏の著書では、その詳しい経緯について取り上げられています。
それによるとノセボ効果は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの最盛期である2020年と2021年に行われたワクチン接種の研究により注目され始めたという。
この研究では、総数約4万5000人以上の人々が参加したコロナワクチン投与に関する12件の論文をメタ分析しています。
これら研究では研究参加者のうち、半数がプラセボ群として何の薬効もない生理食塩水を「コロナワクチン」と称して投与されています。
その結果、実に驚くべきことに、偽ワクチンを接種した人の35%が頭痛や吐き気などの副反応症状を訴えたのです。
実際にはただの生理食塩水を接種しただけなので、身体に有害な作用が起こるはずもありません。
ところが「コロナワクチンには副反応や死亡リスクなどの危険性がある」と人々が信じ込んだために、このような有害な症状が現れたと考えられるのです。
これはまさしく、偽薬に対してネガティブな思い込みを抱くことで有害な症状が出てしまう「ノセボ効果」の存在を指し示す証拠でした。
ブリーズ氏は「実際にはワクチンを接種していないにも関わらず、これほど多くの参加者で副反応症状が報告されたのは大変興味深い」と話します。
またノセボ効果は、コロナワクチンのような薬剤に対する疑念だけでなく、治療を担当する医師への不信感によっても起こり得ると考えられています。
例えば、主治医が「この薬を飲むと副作用が出るかもしれないので覚悟しておいてください」などと否定的な言葉を発すると、患者の方は急に不安になり、実際体に異変は起きていないのに、具合が悪くなったと感じる可能性があります。
こうした現象は患者の自然治癒力を落としてしまう恐れもあります。
ノセボ効果はまさに「病は気から」を体現する現象なのです。
ブリーズ氏は「治療においては言葉が本当に大切であることを指し示しており、医師とのコミュニケーションはおそらく、患者が認識しているよりも重要なプロセスなのでしょう」と述べています。
ノセボ効果についてはまだ本格的な研究が始まったばかりですが、病気を本気で治そうと思えば、治療を受ける側も施す側も、常にポジティブな考えを持つことが大事なのかもしれません。