動物や人間が残す「環境DNA」とは
動物は、排泄物や脱皮した皮膚、その他の物質を通してDNAを環境に放出しています。
それらは「環境DNA(eDNA)」とよばれており、水や土壌、空気などに存在することが分かっています。
例えば、魚の環境DNAは、排泄物、粘液、剥がれ落ちた鱗、皮膚、死体などを通じて水中に存在しており、採取した環境DNAを分析するだけで、その水域にどんな種類の魚がいるのか、また個体数の推定までもが可能だと言われています。
実際、2018年のアメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の研究では、環境DNAの分析により、南カリフォルニアの海域にホオジロザメの存在を確認できたと報告しています。
その海域では、過去の乱獲によりホオジロザメの数が減っていましたが、最新の分析で、いくらか復活していることが分かったというのです。
そして、これら動物たちと同じように、人間もまた行く先々で環境DNAを残していきます。
人間の環境DNAは、私たちが呼吸したり話したりする際に吐き出された飛沫の中に含まれていたり、皮膚から剥がれ落ちる極小片として、しばらく空気中を漂うことがあるのです。
いくつかの研究によると、落屑(らくせつ:皮膚から角層の最外層が剥がれていく現象)により、1日に最大108個もの細胞が落ちると言われています。
また、空気中の環境DNAは、部屋で稼働しているエアコンに吸い込まれることもあります。
オーストラリアのフリンダース大学(Flinders University)に所属するマリア・ゴーレイ氏ら研究チームは、こうした点を考慮し、エアコンと空気中から人間の環境DNAを採取できるか調査することにしました。