偶然発見された原子1個分の厚さの金シート「ゴールディン」
科学者たちは長年、原子1個分の厚さの金のシートの作成を試みてきました。
しかし金の2次元物質を作り出すのは簡単ではありません。
仮に作り出せたとしても、金の2次元物質は非常に不安定であり、丸まって塊になろうとする傾向があるため、これまで成功していませんでした。
ところが今回、柏屋氏ら研究チームは、別の実験を行っていた際に、偶然、金の原子1個分のシートである「ゴールディン」の作成方法を発見しました。
当初彼らは、「Ti 3 SiC 2」というチタンとケイ素の炭化物の電気伝導性の調査を行う予定でした。
そのために、電気を通すための材料として金を用い、「Ti 3 SiC 2」に高温でコーティングしました。
実験は思うように進みませんでしたが、研究チームは、この実験中に材料が上図のように、ケイ素の原子1個分の層が金の原子1個分の層に置き換わっているのを発見しました。
この現象は、「インターカレーション」と呼ばれており、分子または分子の集団の隙間に他の元素が侵入する反応として知られています。
なんと、このインターカレーションによって、「Ti 3 SiC 2」は「Ti 3 AuC 2」に変化したのです。
この偶然の発見を経て、研究チームは、「Ti 3 AuC 2」から金の原子1個分の層を取り出したいと考えました。