ナビゲーション能力を「海洋冒険ゲーム」でテスト!
海洋冒険ゲーム「SEA HERO QUEST」は、プレイヤーがボートに乗って3次元の海洋世界を探検し、行く先々で遭遇する海の生物たちの写真を撮影するモバイルゲームです。
実はSEA HERO QUESTは元々、英国のゲーム会社Glitchersと本研究チームのUCLにより、認知症を研究する目的で2016年に開発されました。
このゲームは美しい海洋世界を冒険すると同時に、複雑に入り組んだ水路を探索しながら目的地に到達するミッションが基本となります。
認知症においてはナビゲーション能力が最初に低下する機能であるため、このゲームをプレイすることで認知症の兆候を早期発見できるのです。
(※ SEA HERO QUESTのプロモーション動画は記事の最後に添付してあります)
今回の実験では、アメリカ在住の健康な成人766名(男性335名・女性431名、18〜59歳)に参加者として協力してもらいました。
参加者には一連のアンケート調査で、日常的な睡眠の質や量、日中の眠気や昼寝の頻度を含む睡眠習慣に回答してもらいます。
その後、SEA HERO QUESTをプレイしてもらい、睡眠習慣とナビゲーション能力の関係性を調査しました。
こちらはプレイ内容の一例を示した画像です。
Aはミッションを示した地図で、プレイヤーは赤旗で示された番号通りに航路をナビゲーションしなければなりません。
Bはプレイ中の様子で、地図を覚えてから閉じた後はもう一度地図を開くことはできず、プレイヤーは記憶だけを頼りにナビゲートするよう指示されます。
Cは3名のプレイヤーのナビゲーション航路を示したもので、左からスコアの高い順(つまりナビゲーション能力の高い順)に並んでいます。
そしてデータ分析の結果、睡眠時間とナビゲーション能力は「男性」において強く関連していることが判明しました。
日常的な睡眠時間が6時間未満と短かった男性は、他の男性に比べて、ナビゲーション能力が最も低下していることがわかったのです。
7時間台から徐々に成績が上がり、8時間台の睡眠をとった男性が最もナビゲーション能力が高くなっていました。
さらに興味深いのは、9時間以上の睡眠をとっていた男性で再びナビゲーション能力が低下傾向にあったことです。
これは寝不足だけでなく、寝すぎも良くないことを示しています。
その一方で、これらの傾向は女性陣には当てはまりませんでした。
女性ではどの睡眠時間でも男性よりナビゲーション能力が低くなっていましたが、その代わりに成績はほぼ一貫して変わらなかったとのことです。
以上の結果から、睡眠不足がナビゲーション能力に及ぼす影響は性別によっても異なることが明らかになりました。
この性差の理由はまだ定かでありませんが、一般的に男性はナビゲーション能力が高い傾向があり、女性は低い傾向が見られます。
研究者らは、こうしたナビゲーション能力における元々の性差が睡眠不足の影響を受けるか否かを分けているのかもしれないと話しました。
しかし、この謎を明らかにするには今後のさらなる研究が必要になります。
いずれにせよ、男性は知らない街に出かける用事がある際には、前日にしっかり寝ておいた方がいいでしょう。
こちらが「SEA HERO QUEST」のプロモーション動画になります。
こちらは「SEA HERO QUEST」を用いた認知症研究の紹介動画です。