キノコには細胞の損傷を防ぐ「抗酸化物質」が含まれている
過去に、食用キノコの摂取量とうつ病の発症リスクの関連性を調べた研究はほとんどなく、その大半は100人未満の被験者を対象とした小規模の臨床試験でした。
そこで本研究チームは、2005〜2016年の間に、アメリカ在住の成人男女2万4699人から収集した食事と精神疾患にかんするデータを分析。
日常生活におけるキノコ類の消費量と、うつ病の有病率を割り出した結果、キノコを普段からよく食べる人は、そうでない人に比べて、うつ病の発症率が半減していることが判明したのです。
調査対象者の平均年齢は45歳で、非ヒスパニック系の白人が過半数(66%)を占めていましたが、中でも白人女性のキノコ消費量が高い傾向にありました。
一方で、キノコ消費量が高すぎる場合には、明確な追加効果は見られていません。ある一定量を超えると、効果の増幅はないことが示唆されます。
研究者によると、キノコ類にはエルゴチオネインという抗酸化物質が含まれており、体内の細胞や組織の損傷を防ぐ効果があるとのこと。
抗酸化物質は、うつ病のほかに、統合失調症、双極性障害(躁うつ病)など、いくつかの精神疾患の予防に役立つという研究結果があります。
主任研究員のジブリル・バ(Djibril Ba)氏は、次のように説明します。
「キノコ類は、ヒトの身体では合成できない抗炎症物質のエルゴチオネインというアミノ酸を最も多く含む食品です。
この成分が多いと、酸化ストレスのリスクが下がり、うつ病の予防だけでなく、症状が軽減される可能性もあります」
アメリカで最もよく食べられているマッシュルームには、不安感を軽減するとされるカリウムが含まれています。
また、他のある種の食用キノコ、特に”ライオンのたてがみ”として知られるヤマブシタケ(Hericium erinaceus)には、神経栄養因子の発現を刺激する効果があり、うつ病を含む精神疾患の予防を促進すると考えられています。
同チームのジョシュア・マスカット氏は「今回の研究により、うつ病を軽減し、他の病気を予防する手段として、キノコ類の摂取が臨床的にも公衆衛生的にも重要である可能性が浮き彫りになった」と述べています。
一方で、今回のデーターでは、消費されたキノコの種類について詳細に明示されていません。
チームは今後、どの種類のキノコが精神疾患の予防に効果的なのかを調べて行く予定です。