横倒しの惑星
天王星の一番の特徴は横倒しで自転していることです。
天王星の自転軸は公転面から約98度傾いており、ほぼ横倒しの状態になっています。そのため、まるで横向きにごろごろと転がっているように見えます。
横向きの状態で太陽の周りを約84年かけて公転しているため、昼と夜が42年ごとに繰り返されます。天王星の北極と南極では夏と冬がそれぞれ40年以上続くのです。
どうして天王星の自転軸は横倒しになったのでしょうか?
これは最初から横倒しになっていたわけではなさそうです。惑星として形成された当初、天王星は他の惑星と同様に自転軸が公転面にほぼ垂直な状態だったと推測されています。
横倒しになった原因は、天王星の形成初期に大きな星が衝突したためという説が有力です。衝突した天体は、その時の衝撃で破壊されてその一部が天王星の衛星や環になったと考えられています。
2011年に発表された最新のシミュレーションによると、従来考えられていたように天体の衝突は1回ではなく、同じクラスの天体による衝突が2回あったと推察されています。
天王星は多くの衛星を従えており、それらの衛星は天王星の赤道面にそって公転しています。もし、天王星の自転軸が突然傾いたとすると、衛星たちはその影響をうけることはなく北極から南極へと同じように動き続けます。その場合、衛星は赤道面にはいないはずです。
しかし、天王星の自転軸の傾きを引き起こした原因が1回の巨大な衝突ではなかったとしたらどうでしょうか?2回のやや小さな衝撃によって引き起こされた、より緩やかなプロセスだったとすると、衛星の配置が現在の形に近くなります。
ちなみに、地球の自転軸も23.4度傾いています。この傾きは、火星サイズの天体が地球に衝突した結果と考えられており、その衝突によって月が形成されたという説が有力です。
面白いことに、天王星の磁場の軸(磁軸)は自転軸に対して60°傾いており、惑星の中心を通っていません。このことは天王星に接近したボイジャー2号の観測によって明らかになりました。むしろ、磁軸の方が公転軌道に対して垂直に近かったのです。
下の図は天王星の磁場を示しています。黄色の矢印は太陽の方向です。水色の矢印は天王星の磁気軸、濃い青の矢印は天王星の自転軸を示しています。
天王星の磁場は、惑星内部の電気伝導性流体の対流運動によって生み出されていると考えられています。 しかし、その詳細なメカニズムは不明な点が多く、なぜ磁軸が自転軸から大きくずれているのかは未解明です。
太陽の磁場は、その活動周期と同じ約11年周期で逆転する現象が知られています。
木星型惑星の磁場の発生メカニズムも太陽とよく似ているので、木星型惑星の磁場は太陽と同じように逆転する可能性があるという説もあります。この考え方によれば、天王星の磁場は今まさにその逆転が起きつつあるのかもしれません。
天王星は水を含む、メタンやアンモニアなどが凍りついた「巨大氷惑星」です。
ただ表面は凍っていても、その内部は極めて高温高圧な環境にあり、水が金属状態になっていると推測されています。
水が金属になるというのはどういうことでしょうか?
金属と言われてまず頭に浮かぶのは、鉄や銅、アルミニウムなどの物質です。ではこれら金属に共通する性質とはなんでしょうか?
おそらく多くの人は、電気をよく通すとか、表面がピカピカとよく光を反射するなどの性質を思い浮かべると思います。
実は、これら電気を通しやすい性質と光を反射する性質はどちらも原子の結合方法に関係があり、この性質持った結合状態の物質を金属と呼んでいるのです。
つまり水が金属状態というのは、水が圧縮されてこの金属と同じ性質(電気を通し、光を反射する性質)を示す原子の結合状態になっているという意味なのです。
ちなみに、純粋な水は常温常圧では電気を通しません。(水が電気をよく通すというイメージがあるのは水が含む不純物の影響です)
また、光に対しては透明です。しかし岡山大学と大阪大学の研究グループは、超高圧下で水が光を強く反射する状態になることを確認しました。これは金属特有の性質があることが示されました。
このように天王星内部では高圧によって「水が金属状態」になっているため、そこを流れる電流が、天王星が強い磁場を生む原因だと考えられているのです。