バスケットボール大の隕石が毎日直撃していた!
本調査でチームが用いたのは、アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発した火星探査機「インサイト(InSight)」に搭載されている地震計です。
インサイトは2018年5月5日に打ち上げられ、2018年11月26日に火星の地上に着陸しました。
その後、火星の地震データや風の音を捉えるなどの成果をあげましたが、電力不足による通信途絶のため、2022年12月21日に運用を終了しています。

しかしその調査期間のうちに、インサイトの地震計は十分な観測データを記録してくれました。
チームはこの振動のデータを分析することで、火星にどれくらいの頻度で隕石が落下しているかを算出することに。
問題は隕石の落下による「揺れ」と、火星の地殻運動による「揺れ」を区別することですが、これはまったく難しくありません。
なぜなら同じ大きさの揺れであっても、隕石の落下による「揺れ」の方がはるかに速く起こるからです。
例えば、火星でのマグニチュード3の地震を観測するには数秒ほどかかりますが、隕石の落下だと同じ揺れを観測するのに0.2秒もかかりません。
こうしてチームは2021年12月からの1年間にインサイトの周辺で隕石の落下が何回起きたかを記録し、それを惑星規模に換算することで隕石の衝突頻度を割り出しました。

その結果、火星に隕石が直撃する頻度はこれまで考えられていたよりも遥かに多いことが判明しています。
具体的には、直径8メートル以上のクレーターを作る隕石が年間に280〜360回、1日に約1回の割合で落下していたのです。
このサイズのクレーターを作るとなると、隕石の大きさなバスケットボール大になるといいます。
さらに直径30メートルを超える大型のクレーターは月に一度の頻度で出現していると推定されました。
研究主任の一人で、惑星科学者のジェラルディン・ゼンハウザーン(Géraldine Zenhäusern)氏は「この数字は従来の画像データだけから推定された数字の約5倍に匹敵する」と述べています。

以上の結果は、火星にあるクレーター生成の歴史をひもとくヒントとなるだけでなく、人類が火星探査をする際の貴重な情報源ともなります。
実際にこれだけ隕石が盛んに降り注ぐのであれば、有人での火星探査をする際の要注意事項となるでしょう。
研究者によると、隕石の衝撃はたとえ隕石自体に当たらなくとも、クレーターの直径の100倍もの爆風域を引き起こすため、非常に危険であるといいます。
もし将来的に火星に移住できたとしたら、最も警戒すべき自然災害は”隕石の雨”となるかもしれません。