霊長類の祖先はペア型の生活であった!
霊長類の祖先はペア型の生活であった! / credit: Olivier et al., PNAS (2023)
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【ぼっちへの進化】サルの祖先は群れをやめて単独生活に戻っていた

2024.07.25 Thursday

ヒトはいつから1人で生きることをやめたのでしょうか?

科学者たちは霊長類(サルの仲間)の社会を調べることで、私たち人間社会の起源を探ってきました。

霊長類の社会について、これまで有力視されていた学説は「霊長類の祖先種は単独生活をしており、そこから時間が経つにつれて群れで生活をする種が出現した」というものです。

元々は独りで生きていた生物が、仲間と協力し合う利点を見つけ、群れ生活へと変化していったというのは理解しやすい考え方です。

ところが、フランスのストラスブール大学(University of Strasbourg)のオリバー氏(CA Olivier)を筆頭とする研究チームが、霊長類215種のデータを解析し霊長類の祖先種の生活形態を調べたところ「霊長類の祖先種は、単独生活をしておらず、1頭のオスと1頭のメスから成るペア型の生活(群れ)であった」ことが明らかになったのです。

これは現在単独生活を送るような種は、以前群れ生活をしていたがそれをやめて単独生活に戻った、という流れを示しており、従来の学説をひっくり返す驚きの発見です。

社会を離れて1人で暮らしたいというのは、個人の願望だけでなく、進化の流れの中でも起きていたことなのかもしれません。

本研究成果は2023年12月28日付に科学誌「PNAS」に掲載されました。

進化と人間行動 https://www.utp.or.jp/book/b600572.html
Primate social organization evolved from a flexible pair-living ancestor https://doi.org/10.1073/pnas.2215401120

サルの社会から、人間の社会を知る

古代ギリシャのアポロン神殿には「汝自身を知れ」と記されています。

この言葉は「私たちは、人間についてよく知らなければならない」という意味であり、私たち人類は人間を知ろうと遥か昔から探究を続けてきました。

では、どのようにしたら、私たちは人間をよく知ることができるのでしょうか?

その答えを求めて教会へと足を運ぶ人もいるでしょう。また、文化や歴史を調べることで答えを探す人もいるでしょう。なかには、芸術を通じて答えをみいだす人もいるでしょう。

そしてまた、「人間は、ヒトという生物である」という前提を出発点として、人間の生物学的側面から答えを探す人もいることでしょう。

最後の立場に立ち、人間の進化の隣人である霊長類(=サルの仲間)を調べることで、人間の起源や進化史を明らかにする試みは日本や欧米で盛んに行われてきました。

いろいろな種類の霊長類
いろいろな種類の霊長類 / credit: Canva、近本賢司

長い歴史のなかで、一部の学者たちは、「言葉をもつ人間だけが社会を形成することができる。そのため、人間と動物を区別する明確な境界線は言葉にある」と考えてきました。

一方、生物系の学者たちは「言葉よりも先に社会を形成する力が進化したはずであり、社会を形成できるのはヒトだけではない」という考えのもと、ヒト以前の社会のすがたの解明を目指して霊長類の研究を進めてきました。

ヒトに加えて、チンパンジーやゴリラなどの類人猿、ニホンザルやメガネザルなどのいわゆるサルを含むグループである霊長類は、ある共通の祖先からだんだんと分岐していったと考えられています。

そのため、この霊長類の祖先が、どのような社会をしていたのかを特定することが、ヒト以前の社会を知るうえで重要なヒントになるはずです。

霊長類の系統樹。現存のサルたちは共通の祖先から進化した。
霊長類の系統樹。現存のサルたちは共通の祖先から進化した。 / credit: 京都大学 理学研究科 理学部HP

長年にわたり、科学者たちは「霊長類の祖先は単独生活をしており、そこから時間が経つにつれて群れで生活をする種が出現した」と考えてきました。

このアイデアがうまれた理由の一つは、現存する霊長類のうち、比較的古くに分岐したサルたち(上の図では原猿)の社会が、比較的新しくに分岐したサルたちと比べて、単純であるという点にあります。

このような、単純なものから複雑なものが生じるという流れは、誰もが簡単にイメージできるでしょう。

例えば、単細胞生物を祖先として多細胞生物が出現したり、一つの受精卵から複雑な体が出来あがったりと、だんだんと組織や構造が複雑化していくことは、生物学において順当な考え方です。

しかし、今回、ストラスブール大学のオリバー氏(CA Olivier)を中心とする研究チームは、従来の学説をひっくり返す発見をしました。

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