ウイルスが哺乳類から手を引いてしまった理由
現在の地球において哺乳類は最もありふれた種の1つとなっており、個体数も膨大です。
なのになぜ、北米の西部馬脳炎ウイルス(WEEV)は、哺乳類を主な感染源にするのを辞めてしまったのでしょうか?
研究者たちはその理由は複数あると述べています。
ですが第1の理由は、馬用ワクチンの普及であると言えるでしょう。
西部馬脳炎ウイルス(WEEV)が最も猛威を振るった時期、馬は今よりも遥かに重要な生物でした。
現代の道路は主に自動車のものですが、当時の移動手段は馬が頼りでした。
そのため人類は西部馬脳炎ウイルス(WEEV)に対して馬用ワクチンを開発し対抗しました。
(※一方2024年現在、FDAから承認を受けたヒト用の西部馬脳炎ウイルスワクチンは存在しません)
ワクチンが普及した環境はウイルスにとって好ましいものではなく、主な感染先を別の種に乗り換える圧力をうみだします。
第2の理由は、産業と農業の機械化です。
西部馬脳炎ウイルス(WEEV)が何度も流行した20世紀初頭では、産業や農業で馬が重要な役割を果たしており、どの農場にも馬小屋があって、多くの馬が密度が高い環境で飼われていました。
そして馬たちの傍には馬と密に接する人間がたくさんいました。
しかし産業や農業が機械化すると、馬そのものの需要が減り、馬と密に接する人間も減っていきました。
人間からすれば馬から機械への切り替えに過ぎませんが、ウイルスにしてみれば、北米のあらゆる地域で主な宿主たる馬が激減したことになります。
このような宿主の激減も、ウイルスにとっては宿主を別の種に乗り換える動機となります。
特に西部馬脳炎ウイルス(WEEV)は進化速度の速いウイルスであるため、環境の変化に敏感に反応できます。
そのため研究者たちは、西部馬脳炎ウイルス(WEEV)は認識する対象を変化させることで、人間や馬以外の種を宿主にしたと述べています。
では、人類はもう西部馬脳炎ウイルス(WEEV)に悩まなくてもいいのでしょうか?