「ドリフト走行可能な自動運転システム」がドライバーの命を守る
今回の実験には、改造されたトヨタのスポーツカー「GR SUPRA」が2台使用されました。
先導車のアルゴリズムはTRIで開発され、安全に先頭を走行できるよう堅牢かつ安定した制御メカニズムを生み出しています。
一方、追跡車はスタンフォード大学によって開発され、先頭車の動きに適応し、衝突することなく並走できるAI車両モデルとアルゴリズムを採用しました。
どちらにもコンピュータとセンサーが搭載されており、ステアリング、スロットル、ブレーキを制御しながら、動き(位置、速度、回転率など)を感知できます。
また2台の車両はお互いに専用のWiFiネットワークで繋がっており、相対的な位置や予想される軌道など、様々な情報をリアルタイムで共有しています。
そして各車両は、急速に変化する状況に対応しながら、どのようなステアリング、スロットル、ブレーキのコマンドが最適かを決定するために、1秒あたり最大50回もの最適化を繰り返すのだとか。
加えて、AIを活用することで以前のテストデータから継続的にトレーニングされ、走るたびに走行の精度が改善されていきます。
実験では、このような最新の自動運転技術により、ドライバーがハンドルに触れずとも、プロレベルのドリフト走行を実証できました。
そして研究チームによると、このドリフト走行技術は、雪や氷上でのスリップからの回復に応用できるようです。
TRIに所属するアヴィナシュ・バラチャンドラン氏は、この点を次のように説明しています。
「車が横滑りし始めると、ドライバーは他の車や木、障害物との衝突を避けるために、自分の運転技術に頼らなければいけません。
平均的なドライバーは、このような難しい状況に対処するのに苦労します。
ほんの一瞬の判断が生死を分けることもあるでしょう」
そんな時、自動運転装置がタイミングよく作動して、ドライバーをサポートするなら、ドライバーや同乗者の生存率は大幅に向上するはずです。
今回のドリフト実験は、単なるパフォーマンスではなく、私たちの命を守るための研究とその技術の実証だったのです。