健康リスクの少ないうつ病対策に注目が集まる
バロン氏らは、うつ病に関して次のように述べています。
「うつ病は、世界で最も蔓延している精神疾患である」
この言葉に多くの人が同意するでしょう。
自分がうつ病になることもあれば、「家族や友人がうつ病だ」という人も多く、それらの人は、抗うつ剤を使用しているかもしれません。
しかしバロン氏は、「一般的に処方される抗うつ剤には、重篤な副作用が出るケースがあり、得られる効果は人によって大きく異なる」と指摘しています。
うつ病になると、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン(意欲や活力に関わる)が減少するため、これを抗うつ剤で増加させてバランスを整え、落ち込みや意欲の低下、不安などを和らげることができます。
これにより多くの患者が救われているものの、下痢や強い眠気、体重増加といった副作用が伴うことがあります。
こうした薬の副作用は、体が慣れるにつれ軽減されていくとされますが、出来れば薬物治療に頼らず解決したいと考える人は多いでしょう。
こうした背景もあって、専門家たちの間では、抑うつ症状を軽減する「リスクのない健康食品」を探すことが、予防と治療における1つの戦略として認識され始めています。
例えば近年の研究では、抑うつ症状の軽減と抗酸化・抗炎症作用の関係が注目されています。
ビタミンDやビタミンE、クルクミンなどは抗酸化作用を通じて、脳の健康を維持し、抑うつ症状を軽減すると考えられてきました。
ではより一般的で、献立を考える手間もなく摂取できる食品はないのでしょうか?
そこで今回、バロン氏ら研究チームが着目したのが、健康食品として一般的な「酢」です。
最近の他の研究でも、「酢が抑うつ症状を軽減させる可能性がある」と示唆されており、バロン氏らの研究は、酢の効果を改めて確かめることにしたのです。