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「デザイナーベイビーは道徳的に許容できる」英国の倫理団体が表明

2018.07.24 Tuesday

Point
・英国では、人の胚に対する遺伝子編集は、現在禁じられている
・「子孫の不利益を取り除くために遺伝子編集を利用することは非倫理的とはいえない」という結論を討論団が出す

人の胚のDNAを変化させるために遺伝子編集技術を使うことについて、「科学やその社会に与える影響を慎重に考慮する限りにおいて道徳的に許容できる」とする意見を、英国倫理討論団が表明しました。

英国のナフィールド生命倫理評議会の専門家は、子孫の遺伝的欠陥を正すために人のゲノム編集を許すように今現在で法律を変えるべきでは無いとしながらも、将来の法律で許可する可能性を排除すべきではないとしました。

評議会は、生物学や医学での新たな発展がもたらす倫理的な問題を調査する独立した団体ですが、アメリカや中国、ヨーロッパ他の科学者や倫理の専門家にも、可能な限り早い段階でヒトゲノム編集がどのような意味を持つのかを問う公開討論に参加するように促しています。

評議会のレポートによると、遺伝子編集技術がもたらした可能性は、「生殖の選択に対する革新的な新しいアプローチ」を意味しており、個人や社会に対して重大な意味合いを持ち得るとしています。

「今、公共の討論や適切な統治を後押しする必要があります。」

CRISPE/Cas9のようなゲノム編集技術は、生きた細胞内で標的となるDNA配列を意図的に変更することを可能にします。原理的には、胚のDNAを胎盤に移す前に編集することによって人の生殖を手助けするために使えます。

英国の法律は、現時点ではこれを禁止しています。しかし、専門家によるナフィールド討論団は、そのうち将来の子供の遺伝的な性質に影響を与えたい両親に、使用できる選択肢を与えることもできるとしています。それは例えば、遺伝病や、成熟後のガンへの感受性を編集で除くといったことです。

「未だゲノム編集が成し遂げる可能性の範囲や、それがどれだけ広がるのかといったことははっきりしていませんが、未来の世代の特性に影響を及ぼす目的でゲノム編集を利用する可能性そのものは受け入れがたいものではないと結論しました」と討論団を率いたバーミンガム大学の法学教授カレン・イェン氏は言います。

評議会の報告では、もしこれが起こった場合、ゲノム編集が倫理的に受容できるような方法で進むことを確実にするために、多くの厳しい法案がまず必要となるでしょう。人の生殖における遺伝子編集技術が倫理的に受容されるためには、2つの包括的な原理がその利用を手引きするべきであることが提案されています。未来の人たちの利益にとっての安全が期されているべきであり、不利益や差別を増加させたり社会を分断することにならないようにすべきです。

英国の医学研究会議の会長のフィオナ・ワット教授はこの報告へのコメントとして、広い討論の呼びかけを歓迎した上で、こう言いました。「後世に引き継がれる可能性のある遺伝子編集が人々の間で許可される前に、研究者たちが安全性や実用可能性を評価し続けることが大切です。」

しかし、英国の運動団体であるヒューマン・ジェネティクス・アラートのデビッド・キング氏は、報告書の結論は「デザイナーベイビー」の承認にサインしたものであり、絶対的な不名誉であると述べています。「私たちは遺伝的に操作された赤ちゃんを作ることを国際的に禁じるべきなのです」

via:Reuters / translated & text by SENPAI

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