尻尾の羽毛は「飾り羽」だった?
ここでも鳥類の羽毛と大きな違いが見つかっています。
鳥類の羽根の一枚一枚には、中央に「羽軸(うじく)」という硬い棒状の軸が走っています。
そして羽軸から左右に枝分かれした細い羽毛が「羽枝(うし)」であり、その羽枝からさらに左右に枝分かれしたより細い羽毛が「小羽枝(しょううし)」です。
この構造により、鳥の羽は風切羽として空を飛ぶための機能を果たすことができます。
(小羽枝の先端はフック状になっており、一枚の羽根の形をまとめる役割も担っている)
ところがコエルロサウルスの羽毛には羽軸がなく、柔らかい羽枝と小羽枝だけで構成されていました。
この特徴は鳥の風切羽よりも「飾り羽」に似ていることから、コエルロサウルスの羽毛には仲間への合図やコミュニケーションのために使われた可能性が高いとのことです。
琥珀標本がまだ幼体であったため、大人になったらどのような羽毛になったかは分かりませんが、おそらく空を滑空するための用途はなく、異性へのアピールや体温調節に使われたのではないかと推測されています。
このように、恐竜の軟部組織が生きていた当時のまま化石化した例は極めて稀であり、この琥珀標本は貴重なサンプルとして話題になりました。
恐竜の化石は歯や骨が見つかることがほとんどですが、筋肉や羽毛、臓器などの軟部組織が回収できれば、彼らの生態をより詳しく明らかにできます。
琥珀は基本的に小さなものなので、その中で保存できる化石のサイズには限界がありますが、古生物の生き姿を留める貴重なタイムカプセルとして研究者たちは大きな関心を寄せ続けています。