菌糸を電子部品の代わりにしたバイオハイブリットロボット
菌糸を電子部品の代わりにしたバイオハイブリットロボット / Credit:Cornell University
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【キノコが機械を制御する!?】菌糸体で電気制御するバイオハイブリッドロボット (2/2)

2024.09.12 Thursday

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キノコ(菌糸体)が動かすバイオハイブリッドロボット

生物の細胞は電気を帯びた状態を保っており、細胞外からの種々の刺激によって、その電位を変化させています。

電気生理学では、電極をそれら組織表面や細胞内に固定することで、電圧や電流の制御や測定を行うことが可能です。

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菌糸体の電気生理学的な活動を記録・変換し、ロボットへ信号として送る。 / Credit:Robert F. Shepherd(Cornell University)et al., Science Robotics(2024)

今回、シェパード氏ら研究チームは、ペトリ皿の中で糸体(菌糸の集合体)を培養し、その菌糸体と電子機器を電極で繋ぎました。

これにより、菌糸体の電気生理学的な活動が正確に記録され、さらにその信号は、ロボットが理解できるデジタル信号へと変換されました。

その後、この部品は多脚ロボットへと組み込まれ、菌糸体から送られる信号で駆動するよう調整されました。

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菌糸体の電気生理学的活動に対応して歩くロボット / Credit:Robert F. Shepherd(Cornell University)et al., Science Robotics(2024)

このように設計されたバイオハイブリッドロボットは、菌糸体の中で生じる自然な信号(電位変化)を感知し、その信号に応じてて歩くことができます。

この状態では、菌糸体から得られる情報をただ読み取ってロボットの歩行に反映させただけですが、研究では、菌糸体が受ける外部刺激によって歩行を変化させることにも成功しました。

ペトリ皿の菌糸体に紫外線を照射することで、電気生理学的活動が変化。ロボットの動きや軌道も変えることができたのです。

このことは、菌糸体を用いたバイオハイブリッドロボットが、環境の変化を読み取って対応できることを示しています。

また別の実験では、ロボットを手動で操作することを想定し、菌糸体からの信号を完全に無効にするテストも実施。見事成功しています。

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紫外線に反応して進路を変える車輪付きロボット / Credit:Robert F. Shepherd(Cornell University)et al., Science Robotics(2024)

さらに、ペトリ皿を装備した車輪付きロボットも開発され、いわば「キノコが運転する車」が動くことも示されました。

ちなみに今回の研究で利用された刺激は紫外線だけでしたが、研究チームによると、将来的には、複数の刺激による入力を組み込むことが可能だという。

この推測は、「生体システムは、光・熱・圧力などの複数の刺激に反応するのが得意である」という事実から来ています。

従来のロボットは、複数の刺激に対応するために、複数のセンサーを装備しなければいけませんが、バイオハイブリッドロボットであれば、1つの生体部品だけで様々な刺激に対応できる可能性があるのです。

研究チームによると、将来のバイオハイブリッドロボットは、まるで生物のように土壌に関する複数の情報を感知し、肥料を追加する時期を決定することなどが可能かもしれません。

まだまだ発展途上な分野ですが、今回の菌糸体ロボットは、将来の道筋をいくらか示してくれました。

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【キノコが機械を制御する!?】菌糸体で電気制御するバイオハイブリッドロボット (2/2)のコメント

ヒオ

なんかこう言うの怖い((( ;゚Д゚)))

ゲスト

ロボットをうまく操縦それば栄養がある場所に移動できるようにして、100世代くらい放置したら面白いことになりそうですね

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