クジラの巨大耳クソから146年間のストレス要因が判明
クジラの巨大耳クソから146年間のストレス要因が判明 / Credit:pixabay
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【長さ25cm超】クジラの巨大耳クソは年輪みたいに年齢もわかる (2/2)

2024.09.21 Saturday

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耳クソから146年間のストレスの正体が判明

従来、クジラを生涯にわたり化学的に分析し、人間の活動や環境変化などのストレス要因がクジラに与える累積的な影響を評価することは極めて困難であるとされてきました。

そこで、トランブル氏らは、ヒゲクジラ類の耳垢栓に着目しました。

ストレスを受けたときに分泌が増えるホルモンであるコルチゾールの測定値と年齢データを組み合わせ、ヒゲクジラ類が受けたストレスを長期的に評価しようと考えたのです。

この研究では、20世紀の商業捕鯨による捕獲個体または近年座礁した個体である、北半球のシロナガスクジラ、ナガスクジラ(Balaenoptera physalus)、ザトウクジラ(Megaptera novaeangliae)計3種20頭から採取された耳垢栓を使用し、1870年〜2016年までの146年間のストレス評価を行いました。

人間の活動がクジラにストレスを与えていた
人間の活動がクジラにストレスを与えていた / Credit:pixabay/ナゾロジー編集部

その結果、20世紀の商業捕鯨による捕獲頭数とコルチゾール測定値に密接な相関関係がある、すなわち、商業捕鯨がヒゲクジラ類にストレスを与えていたことが示されました。

また、興味深い点として、1939年〜1945年の第二次世界大戦中には、商業捕鯨による捕獲頭数が減少したにもかかわらず、コルチゾール測定値の増加がみられました。

このことから、水爆、戦艦、飛行機、潜水艦を使用した海戦などの戦時活動や船舶数増加が、ヒゲクジラ類にとってストレス要因であった可能性が示唆されました。

戦後、商業捕鯨が再開されると、捕獲頭数増加に伴いコルチゾール測定値も増加しました。しかし、1970年代に商業捕鯨モラトリアムが採択され、商業捕鯨が停止されると、コルチゾール測定値も減少したという結果が出ました。

ところが、再びコルチゾール測定値の増加が確認されました。検証の結果、1970年から2016年までの海面水温異常と正の相関関係が認められました。

つまり、海面水温異常の頻度増加が、クジラにとってのストレス要因として、商業捕鯨にとって変わったことを示すと結論づけました。

研究材料は耳クソという思いもよらぬものでしたが、環境問題を考える上で、他の生物への影響は慎重に考慮しなければなりませんね。

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