世界最悪の大量絶滅を引き起こした「メガエルニーニョ」とは
そもそもエルニーニョとは、現代において、中部・東部太平洋の赤道付近において海水温が平年より高くなり、その状態が1年ほど続く現象を指します。
逆に低い状態が続くことをラニーニャと呼び、この2つの現象はそれぞれ数年おきに発生します。
また研究が進むにつれ、エルニーニョやラニーニャは、海洋と大気の相互作用によって起きると分かっており、現在は一連の変動現象を「エルニーニョ・南方振動」と呼びます。
(具体的なメカニズムは完全には解明されていません)
そして、この周期的な変化によって、海水温だけでなく、世界中の気象が大きな影響を受けます。
近年でも、このエルニーニョ・南方振動により、降雨パターンと気温に大きな変化が生じています。
例えば、2023年から2024年は、強力なエルニーニョ現象の影響で、世界的に「最も暑い年」の1つとなりました。
またエルニーニョの影響は地域ごとで異なっており、南アメリカでは豪雨・洪水が引き起こされる一方で、インドやインドネシアでは干ばつが引き起こされました。
研究チームは現在のエルニーニョについて、「幸いなことに、このような出来事は1度に1~2年しか続かない」と述べています。
しかし新しい研究は、2億5200万年前には、火山噴火をきっかけに、もっと大規模なエルニーニョ現象が生じたかもしれないと報告しています。
研究チームはこれを「メガエルニーニョ」と呼んでおり、これがペルム紀から三畳紀にかけて繰り返され、時には1度のメガエルニーニョが10年間も続くことさえあったという。
現在のエルニーニョ・南方振動は、いわばシーソーのように1.2年ごとに傾きが変わるため、生物たちは何とか耐えることができています。
しかし遠い過去には、そのシーソーのバランスが極端、また崩壊しており、片方に傾いたままの状態が長期間続き、ほとんどの生物を絶滅に追い込んでいたというのです。
この影響について研究者たちは、次のように述べています。
「ペルム紀・三畳紀の危機の間、メガエルニーニョが長く続き、10年間にわたる干ばつと、その後数年間の洪水を生じさせました。
気候はあらゆる場所で変化しており、どの種にとっても適応するのが困難でした。
また干ばつが発生しやすい気候では、山火事も頻発します」
火山活動により大量の二酸化炭素が排出される中、メガエルニーニョによる干ばつや火災で森林が減少。温暖化はさらに進んだことでしょう。
この変化は、森林破壊だけでなく、海の中のサンゴ礁の消滅、プランクトンの危機へと繋がっていき、結果としてすべての生物に壊滅的な影響を及ぼしました。
ファーンズワース氏も、「温暖化が進み、植物が死滅。そしてエルニーニョが強くなり、世界の気温がさらに上昇。そうすると再び異常気象が発生。生物はますます死滅していきます」と、負の連鎖・サイクルが生じた可能性を指摘しています。
地球規模の温暖化、干ばつ、火災、そこからの大規模な洪水。あらゆる場所で問題が生じたため、多くの種はこの「気候のジェットコースター」から逃れる場所を見いだせず、絶滅してしまったと考えられます。
この新しい仮説は、単なる「火山噴火による温暖化」説よりも、大量絶滅の理由として納得のいくものかもしれません。