エアポケットは潜水時間を伸ばしていた!
チームはアノールトカゲのエアポケットが機能的な役割を果たしているのか、それとも単なる副産物なのかを調べるため、実験を行いました。
ここではアノールトカゲを捕獲して2つのグループに分け、一方のグループにのみ、皮膚表面に気泡が形成されるのを防ぐ物質を塗布します。
アノールトカゲの皮膚は水を弾く疎水性です。
そのおかげで水中に入ると皮膚に空気がピッタリと密着して、気泡が形成されるようになっています。
そこでアノールトカゲの皮膚に疎水性をなくす物質を塗ることで、水中に入ると普通に水に濡れてしまい、気泡が作れなくなります。
そして両グループの潜水時間を比較した結果、「気泡を作れるトカゲ群」は「気泡を作れなくなったトカゲ群」に比べて、32%も長く水中に留まれることが判明したのです。
これはアノールトカゲの気泡がちゃんと水中での呼吸能力に寄与していることを示した初の証拠となりました。
さらにこの一連の実験観察の中で、アノールトカゲは少なくとも20分間は水中に留まれることが確認されています。
スウィアーク氏によると、もっと長く水中にいられる可能性もあるとのことです。
今回の実験結果から、アノールトカゲは気泡により水中での潜水時間を伸ばすことで、天敵の回避および生存率を高めていることが確実視されてきました。
それから研究者らは他にも、アノールトカゲの潜水能力は水生昆虫を探して食べるためにも役立っているかもしれないと考えています。
この仮説はアノールトカゲの遺骸の胃中から水生昆虫が見つかっていることからも支持されています。
スウィアーク氏は「トカゲのような脊椎動物が水中で気泡を使う例はあまり知られていない(※)ので、この研究は生物学分野に大きな刺激を与え、アノールトカゲにヒントを得た新素材を発明する一助となるでしょう」と述べました。
(※ 昆虫を代表とする無脊椎動物では水中で気泡を使う例がいくつか知られています。例えば、ミズグモは体表面を覆う細かな毛が疎水性であるため、アノールトカゲと同じように気泡を作ることができます)
アノールトカゲの皮膚構造を模倣することで、水を完璧に弾くスーツなどが作れるようになるかもしれません。
スウィアーク氏らはアノールトカゲの生態をより詳しく理解すべく、引き続き研究を続けていく予定です。