・アメリカとメキシコにおける調査で、過去数十年で「気温」が高かった年に「自殺率」も高かったことが明らかになった
・「暑さ」と「自殺率」の因果関係が証明されたわけではないが、多くの研究が無関係ではないことを示している
毎年のように記録的な暑さを経験しているような気がしますが、今年の夏の猛暑は本当に「記録的」な模様です。アメリカや日本をはじめとした北半球の国々が、過去最高レベルの熱波に苦しんでいます。
このような世界的な気候変動が、私たちの「身体的な健康」を脅かしていることは言うまでもありません。今年も熱中症の被害を伝えるニュースを毎日のように耳にします。
そのように私たちの体を蝕む「暑さ」ですが、その「メンタル・ヘルス」への影響は見過ごされがちです。そこに目をつけた最新研究が、「気候変動」と「自殺率」の驚くべき関係を明かしています。アメリカとメキシコの各自治体における数十年のデータを比較した結果、気温が上昇した年ほど自殺率も上昇していることが判明したのです。
https://www.nature.com/articles/s41558-018-0222-x.epdf
そして研究者たちは、このペースで気温が上がり続け、2050年に平均気温が2.5℃上昇すれば、アメリカにおいて1.4%、メキシコにおいて2.3%自殺率が上昇することを予想しています。
これは無視できる数字ではありません。このパーセンテージは「不景気による自殺率の増加」や「銃規制の強化による自殺率の減少」と同程度の数字であると考えられているのです。
当然「暑さ」だけが自殺の原因とは考えられませんが、別の研究では「夏の始まり」に自殺率が急上昇することが明かされています。さらに、600万ものツイートを調査した研究では、「暑い土地」と「ネガティブなツイート」に相関関係があることが判明。「暑さ」と「メンタル・ヘルス」は無関係とは言えなさそうです。
なぜ「暑さ」が「自殺率」を上昇させるのか、その具体的な理由については明らかになっていません。しかし研究者たちは、暑さによる「体温調節」や「神経反応」が、メンタル・ヘルスに何らかの影響を与えている可能性があると語ります。
このように、私たちの「身体」と「精神」の両方を蝕んでしまう地球温暖化。こういった新たな視点からの研究が、温暖化ストップに向けた世界的な活動の足がかりとなることが期待されます。
via: sciencealert / translated & text by なかしー
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