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Credit:Canva . 川勝康弘
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【ノーベル医学賞2024】マイクロRNAを小学生にもわかるように解説

2024.10.09 Wednesday

2024年のノーベル医学賞は、マイクロRNAを発見したアンブロス氏とラブカン氏に送られました。

生物学に従事する人々にとってマイクロRNAは非常に馴染みが深いものですが、多くの人にとっては「マイクロなRNAってどういうこと?」と、よくわからない存在になるかと思います。

そこで今回は「細胞を工場」「DNAを設計図」「RNAを設計図の部分写し」とわかりやすく例えることで、マイクロRNAがどの部分に働き、どんな影響を及ぼすかを解説したいと思います。

for the discovery of microRNA and its role in post-transcriptional gene regulation https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2024/press-release/

細胞工場の中での「マイクロRNA」の役目

全体の設計図「DNA」と設計図の部分写し「RNA」の関係

私たちの細胞は、日々多くのタンパク質を製造することで、命を支えています。

髪も爪も皮膚も多くがタンパク質で構成されており、身体中を流れる赤血球が酸素を運べるのも、酸素運搬用のタンパク質が存在するからです。

私たちの体を支える骨も、コラーゲンという皮膚にも存在するタンパク質にカルシウムが付着することで形成されています。

人間や動物の体は、常にタンパク質を作り続けている細胞と言う「小さな工場」が無数に集まってできていると言えます。

しかし工場の機械設備だけあっても製品はできません。

細胞工場がタンパク質という製品を作り出すには設計図が必要です。

その設計図の役割を果たしているのが核に収められたDNAです。

DNAには人間や犬や猫など、種ごとに必要とする全てのタンパク質の設計図が含まれています。

設計図の違いが生き物の形の違いをうみだしているとも言えるでしょう。

そのため毛などに残されたDNAを調べることで、逆にその毛がどんな生き物のものであるかを特定することも可能です。

まとめ

「細胞ではDNAという設計図をもとに、タンパク質という体の部品を絶え間なく製造している」

しかしタンパク質が作られる主な装置群が存在するのは核の外側の領域です。

また細胞工場は命を維持するために、同時に何百個ものタンパク質を製造する必要があります。

一方で、核内に存在するDNAは基本的に1セットしか存在しません。

何百というタンパク質製造現場に、1セットしかないDNAが引っ張りだこになっては大変です。

そこで登場するのが「設計図の部分写し」となるRNAです。

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DNAは全体の設計図でRNA(mRNA)は設計図の部分写しとして機能しタンパク質製造現場に運ばれます/Credit:Canva . 川勝康弘

RNAはDANから必要とされるタンパク質の情報だけを写しとって、タンパク質が製造されている現場まで運ぶ役割を果たします。

こうすることでDNAを安全な核内に留めながら、無数の製造現場に必要となる種類と量を届けることができるのです。

まとめ

「DNAが全情報を含む設計図ならば、RNAは必要な部分の情報だけを写し取った設計図の部分写しである」

ここまでは、細胞工場の中でのDNA(設計図)とRNA(設計図の部分写し)の基本的な話を中心にしてきました。

ただ「基本的」という言葉どおり、全てがこの仕組みで上手くいくわけではありません。

その問題の1つが「いらなくなったRNA(設計図の部分写し)をどうするか?」というものです。

細胞工場も現実の工場と同じように、ある時期には特定のタンパク質の需要が高まり、別の時期には需要が低下することがあります。

そのため、需要に応じて大量に製造してしまったRNA(設計図の部分写し)が余ってしまうこともあるのです。

この余ってしまったRNAを放置しておくと、タンパク質製造の現場は必要がないタンパク質を製造し続けてしまいます。

タンパク質の製造現場は細胞全体の需要など気にせずに、とにかくRNA(設計図の部分写し)どおりにタンパク質を作り続けるのが仕事だからです。

細胞工場の中には、下の図のように、不要になったタンパク質を分解するための破砕機のような分解マシーン(プロテアソーム)も存在します。

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タンパク質を粉砕する分解マシーン/Credit:wikipedia

しかし分解マシーンを動かすコストはタダではなく、不要なタンパク質が増えれば必要とされる分解マシーンの数も増え、さらに無駄が増えてしまいます。

分解マシーンを用意する前に調節する仕組みがあれば、このような無駄を省けます。

ここで登場するのがマイクロRNAです。

マイクロRNAの役割

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マイクロRNAがくっついたmRNAからはタンパク質が作られるのを抑制されてしまいます/Credit:Canva . 川勝康弘

マイクロRNAの正体は20塩基ほどの小さなRNAです。

マイクロRNAは作り過ぎてしまったRNAに結合する機能があり、設計図の部分写しとして働かないようにする機能があります。

タンパク質製造現場で動いている装置(リボソームという)は、ある意味で、プレス機のような仕組みをしており、RNA(設計図の部分写し)を差し込んで、原料となるアミノ酸を流し込みプレスすることで、アミノ酸を繋げ、タンパク質を作っていきます。

しかしマイクロRNAが結合してしまうと、RNAの差し込みが上手く行われず、プレス機が停止してしまいます。

またRNAに余分な構造がくっついていることで、新たなプレス機を作るときに障害となり、新規のプレス機の組み立ても上手くいかなくなってしまいます。

さらにマイクロRNAが結合したRNAは、安定性が低下して分解されやすくなることも知られています。

プレス機の動きや新規組み立ての迷惑になる前に、余分なRNAを分解してしまえば、より効率的でしょう。

このようにしてマイクロRNAは、余分なRNAがこれ以上不必要なタンパク質を作るのを阻害するのです。

まとめ

「マイクロRNAは余ってしまったRNAに結合して無駄なタンパク質が作られるのを防げる」

ここまでの説明を聞くと、マイクロRNAは無駄をなくすための節約システムのような印象を受けるでしょう。

確かにマイクロRNAは需要のないタンパク質を作るのを防ぐのが第一の任務です。

ですが視点を生命全体にまで拡大すると、より大きな使命がみえてきます。

次ページマイクロRNAは遺伝子活性度の制御を担う指揮者

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