電気縫合糸は傷の治癒スピードを50%も加速させる
新しく開発された電気縫合糸は、実験では2.3ボルトの電気を発生させることができました。
そして、この治癒効果を確かめるために、研究室で培養したマウス細胞を利用しました。
その結果、表面積の69%を占めていた傷は、電気縫合糸によって、24時間後には僅か10.8%にまで縮小しました。
一方で、従来の縫合糸を用いたケースでは、傷は24時間後に32.6%までしか縮小していませんでした。
電気縫合糸を使用することで、治癒が50%も早まったのです。
ここまで治癒が早まったのは、電気刺激によって「線維芽細胞(せんいがさいぼう)」の働きが活性化されたからだと分かりました。
線維芽細胞とは、皮膚の真皮層にある細胞であり、傷ついた組織に移動して大量のコラーゲンを作り、傷の修復を助ける役割があります。
そしてこの線維芽細胞の移動が、電気刺激を受けることで速くなり、結果として治癒が促進されたのです。
次に研究チームは、ラットを用いた動物実験を行いましたが、ここでも電気縫合糸は良い成果を収めました。
電気縫合糸を使用した場合、ラットの傷口が10日で96.5%塞がったのに対し、従来の縫合糸は、60.4%しか塞がらなかったのです。
加えて、ラットの傷口の感染の程度も確認したところ、毎日傷口を消毒しなくても、電気縫合を受けたラットは、従来の縫合を受けたラットよりも、細菌数を低く抑えることができていました。
これはつまり、電気縫合糸を使用することで、手術後の感染症にかかる確率を低減できることを示しています。
もちろん、現段階ではこの新しい電気縫合糸が、人間に対してどの程度の効果を発揮するのか分かりません。
それでも今後の研究で効果や安全性が示されるなら、患者を助けるための強力な選択肢が誕生することになります。
さすがに「動け!傷口が閉じるぞ!」とは言えませんが、ちょっとくらい動いても安心な時代が近づいているのです。