「花粉は早く付けた者勝ち?」植物が直面する問題
子孫を残すことは自然界に生きる生物たちの至上命題です。
生命の本質を突き詰めていくと、あらゆる生き物は自らの遺伝子を後世に伝えて、種を繁栄させるために弱肉強食の世界を生き抜いています。
それは植物にとっても同じことです。
ただ植物は土に縛り付けられているせいで、動物のように自ら移動してパートナーに直接アピールし、交尾をして、子供を授かることはできません。
そこで彼らはおしべの葯(やく)という袋の中にある「花粉」を飛ばし、同種の植物のめしべに受粉させて繁殖する方法を取っています。
そのプロセスで最重要になるのが、花粉の運び手となる昆虫やハチドリなどの「送粉者」の存在です。
もちろん風が花粉を運んでくれることもありますが、昆虫やハチドリは蜜を吸うために植物から植物へと渡り歩いてくれるので、体に付着した花粉が移動先の植物のめしべに受粉する確率が大いに高くなります。
ところがここで植物たちが直面する問題があります。
それは蜜を吸いに来た送粉者の体がすでに別種の植物の花粉で覆われてしまっていることです。
送粉者たちは都合よく、自分たちの種だけの蜜を吸ってくれるわけではありません。
そうなると例えば、植物種Aが自らの花粉を送粉者に付けたいのに、彼らの体はすでに植物種Bの花粉にまみれていて、もはや自分の花粉を付着させるスペースがない場合があるのです。
これではただ蜜を吸われるだけなので、植物種Aにとっては損でしかないでしょう。
こうした背景を踏まえて、研究チームは非常に興味深い繁殖戦略を持つ植物に注目しました。
ブラジル固有の赤い花を咲かせる「ヒペネア・マクランサ(Hypenea macrantha)」です。