太陽系外で燃え盛る「火山の衛星」の噴煙が発見される
太陽系外には私たちの知らない世界が広がっていますが、そこでは不思議な現象がよく観測されます。
2017年、科学者たちは、地球から遠く離れた太陽系外に、「噴煙」のような「ナトリウムの雲」の存在を確認しました。
その場所とは、太陽系外惑星「WASP-49 b」の周辺です。
太陽系外惑星「WASP-49 b」は、土星ほどのサイズの「巨大ガス惑星」であり、地球から635光年離れた場所に存在しています。
当初、この発見は科学者たちを困惑させるものでした。
こうした雲は、火山を持つ天体がガスを放出する時によく見られるものですが、WASP-49 b自体はガス惑星であり、火山が存在する可能性が低いからです。
WASP-49 b自身がナトリウムの雲を生成しないのであれば、別の何かがそれを生み出しているはずです。
そのため科学者たちは、「WASP-49 bの近くにはイオのような火山を持つ衛星が存在している」と考えるようになりました。
ちなみにイオとは、木星の衛星の1つであり、活火山を持ち、噴煙を発生させる天体として知られています。
そしてNASAのジェット推進研究所(JPL)は、2024年10月10日、WASP-49 bの衛星の存在を示唆する新たな証拠を発見したと報告(論文は9月30日付)しました。
彼らは過去数年間に収集されたデータを分析し、ナトリウムの雲に関する新たな情報を明らかにしました。
1つ目の情報は、ナトリウムの雲の量です。
ナトリウムの雲は毎秒10万kgも生成されていると判明しました。
これは、WASP-49 bやその主星である恒星に含まれているナトリウム量をはるかに上回っています。
そのためJPLの研究者は、「惑星と恒星以外の何かによって、この雲が生成されているという説は、非常に説得力があるものです」と述べました。
2つ目の情報は、ナトリウムの雲の軌道です。
新しい観測によると、ナトリウムの雲は常に存在しているわけではなく、現れたり消えたりしており、WASP-49 bと恒星の後ろに隠れる時に見えなくなっています。
さらに、雲が惑星よりも速く動いることを観測しました。
研究チームは、「この雲が、惑星よりも速く動いている別の物体によって生成されたのでなければありえない観測結果だ」とコメントしています。
また雲の方向に関しても、「もし雲が惑星の大気の一部であるなら、観測された方向と逆方向に動いているはず」と述べています。
これら新しい証拠は、WASP-49 bにはイオのような火山を持つ衛星が存在することを示唆しています。
加えて研究チームは、コンピュータモデルを使って、WASP-49 bの周りを衛星が8時間で周回している場合、雲の動きを説明できることも示しました。
そしてこの衛星は、地球の月と同じくらいの大きさだと考えられています。
現代の技術では太陽系外衛星を直接検出し確認することは困難です。
しかし、太陽系内に存在する火山の衛星イオの存在が、類似した「WASP-49 bの衛星」が存在することへの確信を強めるものとなっています。
とはいえ研究チームは、「この太陽系外衛星が、火山活動による質量損失と軌道の減衰により、いずれWASP-49 bに落下・崩壊するだろう」とも予想しています。
今後、太陽系外の火山衛星はどうなっていくのでしょうか。
太陽系内の火山衛星イオの観測を続けるなら、ヒントが得られるかもしれません。
そういった意味でも、最近報告が上がったイオの観測結果は、私たちの興味を引くものです。