再び歩く!麻痺患者の夢を実現させる「外骨格」とその課題
下半身が麻痺した患者にとって、再び歩くことは夢のようなものです。
特に重症度が高いと一層そのように感じるかもしれません。
例えば、1982年に米国脊髄損傷協会(ASIA)によって定められた「ASIA機能障害尺度」では、そのグレードがE(正常)~A(完全麻痺)の5段階に分かれており、グレードが上がれば上がるほど、再び歩くことが困難になります。
しかし、KAISTの研究チームは2015年から、そのグレードA「運動・知覚の完全麻痺」の患者を対象に、再び歩けるようにする外骨格を開発してきました。
2016年、彼らは初めて下半身麻痺患者用の外骨格である「WalkON Suit 1」を発表。
その後、第四世代まで改良し、2020年には障がいの無い人の通常の歩行速度である時速3.2kmを達成した「WalkON Suit 4」を発表しました。
しかし、この外骨格には、他のウェアラブルロボットに共通する根本的な問題がありました。
それは、外骨格を装着するには、他人の助けが必要だということです。
患者は、外骨格を装着できればひとりで歩くことができますが、そもそも装着する時に、誰かに助けてもらわなければいけなかったのです。
しかし、研究チームは諦めませんでした。
最近、この問題を解決した、患者ひとりで装着できる次世代外骨格「WalkON Suit F1」の発売に至ったのです。
この外骨格ロボットでは、後ろ向きに座る方式ではなく、前向きにドッキングする方式が採用されているため、患者は車椅子から降りてロボットに乗り込む必要がありません。
またロボット自体が装着をサポートするため、途中で誰か人間の助けを借りる必要もありません。
このように、患者ひとりでの装着が可能になったのは、この外骨格ロボットが優れたバランス機能を有しているからです。