うつ患者が持つ「ネガティブ・バイアス」とは?
うつ患者の脳が日常体験をどのように捉えているかを理解することは、うつ病のより効果的な治療法を開発するために重要です。
これまでの研究によると、うつ患者は音や匂い、視覚などの感覚体験を過度に否定的に捉えてしまうネガティブ・バイアスを持つことが知られています。
普通の人では何とも思わないような音や匂いの刺激に対して、過剰に不快な感情を抱き、それがうつ症状の発症につながっていると考えられるのです。
研究主任のシャンタル・ヘンリー(Chantal Henry)氏はこう述べます。
「ネガティブ・バイアスは、うつ患者が周囲の刺激から受け取る感情のあり方を変えてしまいます。
その結果、普通の人にとっては楽しいはずの刺激が快楽的な価値を失い、反対に不快な刺激はさらに不快さを増して感じられるようになるのです」
しかし一方で、うつ患者がこうしたネガティブ・バイアスを持つことの背後にある脳メカニズムはいまだ解明されていません。
そこで研究チームは今回、感情を処理することで知られる脳領域の「扁桃体」に焦点を当てて、ネガティブ・バイアスに関与する脳回路を明らかにすることにしました。