ストイックな男性が「命を絶つ」選択に走る理由とは?
研究者らは、伝統的な男性像に縛られるストイックタイプの心理がいかにして自殺願望や自殺行動を引き起こすかについて見解を述べています。
まずもってストイックタイプが抱く男性像とは、先ほど示したように「男は黙って働くべき」「感情を押し殺して弱音を吐かない」といった考えを基本とします。
そうなると例えば、仕事に行き詰まったり、お金もなく家族もできないなど、プライベートでも問題を抱えたりすると、ストレスや苦しみを胸のうちに閉じ込めて、自分だけで抱えてしまうことになります。
また「弱音を吐いてはいけない」との考えから、周囲に悩みを打ち明けたり、助けを求めることができません。
関係性の深い友人や恋人、親兄弟にさえ、「悩みを打ち明けたら自分が弱いと思われる」と考え、孤立感だけがますます深まってしまいます。
そして最終的に「問題は自分だけで解決しなければならない」との考えに至り、その解決方法として「自ら命を絶つこと」を選択してしまうのです。
ストイックタイプはこうした「男は強くあるべき」との信念にがんじがらめになるあまり、自らを死に追いやってしまう可能性が高いのだと研究者は指摘します。
また研究チームは興味深い点として、「伝統的な男性像を抱くストイックタイプは心理的ストレスに晒された場合、うつ症状のような典型的な精神疾患はあまり示さず、腰痛などの身体的問題の形となって現れる傾向があった」と話しました。
これはおそらく、ストイックタイプの男性にとって、うつ症状のような精神的な不調を訴えることが「心の弱さ」や「男らしさの欠如」とみなされるためではないかと考えられています。
その代わりに、ストレスによる不調は精神疾患ではなく、腰痛や頭痛などの身体的問題として訴えられやすくなるのだと考えられます。
研究チームはこれらの結果を受けて、自殺リスクに晒されている男性をいち早く特定するために今回の知見を役立てることができると考えています。
「男は感情を押し殺し、黙って働くべし」との考えを持ちながら、身体的な不調を訴えている男性は、もしかしたら自殺の危険性を知らせるSOSとなるかもしれません。
ストレスで不調の症状が体に出るのか、それとも脳に出るのかは、外向的か内向的か、他責的か自責的かどうかにも影響があったりして