伝統的な男性像に縛られている人は「自殺リスクが2倍以上」に
年間の自殺者数は女性より男性の方が遥かに多いです。
これは世界的に共通する傾向であり、男性の自殺率は女性のおよそ2〜4倍となっています。
この性差について研究者は「自殺願望を抱いている男性に気づくのが難しいことにある」と指摘します。
例えば、男性は女性に比べて医師や周囲の人々に自殺願望があることを打ち明ける可能性が低く、胸の内に秘めた自殺願望から実際に行動に移すまでが早いという。
それゆえ、自殺を踏みとどまるように説得したり、医師や友人、家族による助けが間に合わない場合が多いのです。
その一方で、チューリッヒ大学の心理学者らは「男性に自殺願望を抱かせる社会心理的な要因はよくわかっていない」ことに注目しました。
つまり、どんな心理が男性を自殺に走らせるのか、という問題です。
そこで研究チームは今回、男性の社会心理的な側面と自殺リスクとの関連性を調べることにしました。
本調査ではドイツ語圏に在住の男性約500名をボランティアとして募り、一連の質問票に回答してもらっています。
調査した項目は、伝統的な男性像をどれだけ持っているか、過去または現在に自殺願望を抱いたことがあるか、または実際に自殺行動を取ったことがあるか、抑うつ症状の状態などについてです。
まず、参加者の社会心理的な特性を分析したところ、大きく3つのタイプに分けることができました。
1つ目は「平等主義者(Egalitarian)」です。
このタイプの男性は例えば、「男はこうあるべき、女はこうあるべき」といった古い考えに固執することなく、「男女は平等であるべき」との柔軟な考えを支持しており、参加者の60%がこれに当てはまりました。
2つ目は「遊び人(Player)」です。
このタイプの男性は典型的な男らしさのイメージを強く持ってはいたものの、それはほとんど常に女性問題に関連することでした。
遊び人タイプが抱く男らしさは、女性の性的パートナーを多く持ったり、意中の女性のハートをつかむ上で重要視されていたのです。
参加者の15%がこれに当てはまりました。
最後に3つ目が「ストイック(Stoic)」です。
このタイプの男性は文字通り、社会地位的および経済的な成功のために「男は黙って働くべき」「辛くても感情を押し殺して、弱音を吐いてはいけない」「競争に勝つためにはリスクのある行動を取る必要がある」という伝統的な男性像を強く抱いていました。
参加者の25%がこのストイックタイプに当てはまっています。
そしてそれぞれのタイプと自殺リスクとの関連性を比較した結果、ストイックタイプは平等主義者タイプと比べて、自殺に走るリスクが2倍以上も高いことが判明したのです。
対照的に、遊び人タイプには自殺リスクの有意な増加は認められませんでした。
では、伝統的な男性像に縛られている人ほど、自殺しやすいのはなぜでしょうか?