「男らしさ」に潜む悪影響
「男らしさ」という言葉からは、力強さや勇気だけでなく、誠実さや思いやり、責任感などポジティブなイメージを抱きがちです。
確かに、そのような男性がいれば周囲の人々は信頼や安心感を感じ、精神的な支えになるでしょう。
しかしそのような「男らしさ」を持ちたいと思っている男性は注意が必要かもしれません。
なぜならこのような伝統的な「男らしさ」は、精神的健康に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
例えば、米ブルーミントン大のジョエル・ウォン(Joel Wong)氏らは、「男らしさ」とメンタルヘルスの関係性を調べた78の研究のメタ分析を行っています。
メタ分析の対象になったデータには、日本人のデータも含まれています。
分析の対象となった過去の研究は、「男性らしさ」を測定するためにいくつかの基準に基づきデータを得ています。
その11の基準には、勝利にこだわる、感情をコントロールする、リスクを取ろうとする、物事の解決には暴力が必要だと考える、物事をコントロールしたがる、性行為に積極的である、他人に頼らない、仕事を優先する、女性を支配しようとする、同性愛を軽蔑視する、社会的立場に価値を置く、がありました。
読者の男性のみなさんは、どのくらい上記の基準に自分が当てはまるでしょうか。
メタ分析の結果、「男らしさ」を求めている男性ほど、ストレス、抑うつ、不安、薬物乱用や自分の身体に自信がないなど、精神的にマイナスの影響があることが確認されたのです。
特に強い相関関係が見られた基準は、「性行為に積極的である」「他人に頼らない」「女性を支配しようとする」の3つでした。
なぜ「男らしさ」に拘るとこのような弊害が生じるのでしょうか。
これは「男らしく」あるべきという社会的なプレッシャーや涙を流すべきでないなどの感情の抑制、「自立すべき」という他者からのサポートを得ることが難しくなるなど、自分の感情や弱さを表に出すことが難しく、ストレスや不安を本人だけが抱え込えこみやすくなる結果だろうと考えられています。