ADHD症状が顕在化する原因はなんなのか?
ADHDを持つ人は、集中力を長く維持したり、計画的に作業を進めたり、衝動を抑えたりするのに苦労します。
ADHD症状は一般的には12歳以前の小児期に始まりますが、青年期および成人後になって診断されるケースも数多く報告されています。
1つ注意して欲しいのはADHDは先天的な神経発達障害によって起こる諸症状を指すもので、風邪のようにあるとき突然罹るというようなものではないということです。
ADHDと診断されることを、発症と表現しますが、これは潜在的に持っていたADHDの症状が表面化したり、後になって発覚した状況を言っています。
症状の程度によっては幼少期は特に問題にされず、忘れっぽい子とか、落ち着きがない子で済まされていたものが、大人になって仕事に支障をきたす様な問題を起こすことが増え診断を受けた結果ADHDだと発覚した、というのが主に青年期以降に見られるADHD発症のケースです。
特に近年はADHDへの認識度の高まりに応じて診察の機会が増えており、このために世界的にADHDと診断される大人の数が急増しているとされています。
ADHDがどんな症状を特徴とするのか、ADHDが顕在化しやすいのはどの年齢なのか、といった情報は世間的にも理解され始めていますが、その一方で「ADHDがどのような経過を辿って症状の顕在化に至るのか」はよく分かっていませんでした。
これまでのところ、ADHDは特定の「認知機能障害」と「動機づけ機能障害」の組み合わせに起因するというのが有力な見方となっています。
認知機能障害とは、記憶力や注意・判断力、言語能力といった脳の認知機能に何らかの欠陥が生じる問題です。
これを起こすと、注意が散漫になったり、計画能力や時間管理が損なわれたりして、ADHD症状を起こしやすくなると考えられています。
一方の動機づけ機能障害とは、行動を起こすための意欲や、目標達成に向けた努力をする能力に何らかの問題が発生している状態です。
こうした人は例えば、一度始めた行動や活動を長期間維持するのが難しかったり、やってる途中で物事への興味を失ったり、明確な目標設定が困難なため、難しい課題やプレッシャーのある状況を避ける傾向が強くなります。
ただ、この2つは共にADHD症状と関連性の深い要因とされますが、実はADHD症例の30%には見られず、ADHD症状を持つことを確実に予測できる因子ではありませんでした。
確かにADHDについては、子供の頃は多動性、大人になると注意欠陥が主な症状になる、というような説明がよくされおり、状況によって症状の表れ方に変化があることも示唆されています。
そこで研究チームは、ADHD症状により深く関与している要因が他にあるのではないかと考え調査を行ったのです。