絶対零度を超える負の温度は「この世の何より」も熱い
絶対零度を超える負の温度は「この世の何より」も熱い / Credit:clip studio . 川勝康弘
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絶対零度を超える負の温度は「この世の何より」も熱い (2/2)

2024.12.23 17:00:27 Monday

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「奇妙な量子状態」×「奇妙な温度状態」で何が起こるか?

奇妙×奇妙で何が起こるか?

答えを得るために研究者たちはまず、奇妙な量子状態として幾何学的フラストレーションを用意しました。

量子の世界でも、正の温度の世界では、最もエネルギー状態の低い粒子が多数派を占めるのは同じです。

しかし幾何学的フラストレーションを用いて形成される量子状態では、最もエネルギーが低い状態が複数出現してしまい、異なる状態にありながらもどれも最低エネルギー状態という奇妙な状況が出現します。

(※通常の正の温度の世界では、最低エネルギー状態は1種類です)

結果として、どの状態が優勢になるかは非常にあいまいで、系が1つの状態に収束できない混沌とした状況が発生します。

すると量子力学的なトンネル効果や干渉が非常に起きやすいようになり、普通の状態では見られない多種多様な繊細な量子的重ね合わせや干渉が発生します。

つまり幾何学的フラストレーションを使うと量子現象が多発する「量子状態のごった煮」を出現させることが可能になるのです。

このような「量子状態のごった煮」にあるものを、異常な負の温度の世界に案内したらどうなるのか?

研究者たちはさっそく実験を開始しました。

奇妙に奇妙をかけあわせたらもっと奇妙になりました
奇妙に奇妙をかけあわせたらもっと奇妙になりました / Credit:clip studio . 川勝康弘

調査にあたってはまず、カリウム39原子を真空チャンバーに閉じ込め、レーザーや磁場を使って絶対零度近くまで冷やします。

次に外部磁場や光格子の深さなどを一気に変化させ、もともと低エネルギー側にいた原子たちを高エネルギー側に移動させ、負の温度の状態を作り出します。

今回の研究ではこの光格子が特殊であり、幾何学的フラストレーション構造をしているため「量子状態のごった煮」を形成させることができました。

そして最後に観測を行い「奇妙な負の温度状態」にある「量子状態のごった煮」がどんな性質をしているかを調べました。

すると、高エネルギー状態の粒子が詰まっている状態にありながら、幾何学的フラストレーションのせいで、どこにも落ち着けない状態になっていることが明らかになり、粒子はこれまでにない不思議な秩序や新しい相転移を見せていることが判明しました。

さらに運動エネルギーがゼロであるのにも関わらず、内部で超流動が生まれている可能性が示唆されました。

これはある意味で走るための体力が全く無いのに、滑らかに動けてしまうという奇妙な状況です。

実験ではその様子を観察することで、これまで理論的には予想されつつも観察されたことのない奇妙な量子現象の手掛かりを得ることができました。

研究者たちは「これらの特性がどのような物質を生み出すのか確信が持てず、現在、この新しい量子物質の特性を突き止めるという課題に直面している」と述べています。

中学の理科の実験で、最後余った試薬をビーカーに投げ込んでごった煮を作ったり、さらにそれを加熱したりして、煙や泡が出たり発熱する様子を楽しんだ人もいるでしょう。

それらのごった煮の現象は中学で習うどの化学式よりも、高度で複雑な反応によるものです。

今回の研究では、研究者自身も良く解っていない幾何学的フラストレーションと負の温度を掛け合わせ、何が起こるかを調べた、最先端の遊びとも言えるものです。

もしこの状態を説明し制御する方法を見つけられれば、人類の量子技術はより高度なものへと飛躍できるでしょう。

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絶対零度を超える負の温度は「この世の何より」も熱い (2/2)のコメント

おじさん

>古典物理によれば、物体の温度は内部の粒子の運動エネルギーによって決まり、0Kの物体は粒子がまったく動かず、エネルギーレベルがすべてゼロにそろった状態と解釈されます。

これは違う。
温度は観測系によらない物理量のため、例えば乗りものの中の絶対零度の物体は運動エネルギーが0ではないが、絶対零度といえる。
重心速度は温度と無関係なので注意が必要である。
「無邪気に温度は粒子の運動エネルギーの大きさを表す」とか言うとボロクソに叩かれることになる。

また、負温度(=反転分布)が古典系で実現できないというのはやや言い過ぎ。
低温の少数の粒子団に急激に高温の粒子団を合流させることは可能。
可能だが、自然に熱平衡状態に近づこうとするため、過渡的にしか実現できないだけ。
量子の励起だけが高エネルギー粒子の分布を増やす手段というわけではない。

全体的に温度の扱いがやや雑に思える。
現代における熱力学的温度はエントロピーをベースにした概念であり、かなり高度な概念なので丁寧に扱う必要がある。
そうしないと、温度にうるさいおじさんにケチをつけられることになる。
一般人は別に何とも思わないだろうが。

若林直樹

量子状態は、最初に宇宙が出来る時に、予め「こういうルールで」と設定されたものです。
ルール外は、どうなるのか?という視点で観ているのは、とても新鮮な気持ちで良かったです。
ルール外でも、数学のルールで説明が付くのは、私自身も奇跡である、としか思わざるを得ません。反物質のルールは?正物質と反物質からなる魂のエネルギーとは?数学という言語で書かれている事を願っています。

Tモリグ

負の温度が他のものにエネルギーを与え続けられるとすると、宇宙のあらゆる物質が高エネルギーになってしまうのではないかな
人類がそれを作り出すことができるとしたら、宇宙の様々な現象でも可能なはずで現在の宇宙がそういう高エネルギーで満たされていないのはなぜだろう

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