賛否両論の「体重別運賃」は、若者には特に受け入れられている
一般的な航空会社では、旅客機に載せる手荷物に対して重量やサイズに制限が設けられています。
それを越えると、超過手数料が求められる場合があります。
そして、こうした重量に対する超過手数料が、乗客自身にもかかるケースがあるようです。
例えばサモア航空は、2013年に世界で初めて「重い人ほど料金が上がる」という「体重別運賃」システムを導入しました。
この案に対しては、賛否両論の様々な意見が飛び交うことになりました。
確かに、乗客が重ければ重いほど、その分燃料が消費されるため、航空会社からすると「乗客への公平な要求の1つだ」と言えることでしょう。
また、この取り決めには、肥満な乗客の航空機の利用が低減したり、人々の肥満化を抑制したりする効果があるかもしれません。
そのため、環境や人々の健康に優しい取り決めだと主張する人もいます。
一方で、乗客に「肥満税」を課すものだとして批判する声も多く上がりました。
ちなみに少し前には、プラスサイズのインフルエンサーが、2席分の座席を使用(1席だとはみ出てしまうため)した際、2席分の料金を求められるのは差別的だとしてSNSで航空会社を糾弾し、大きな話題を呼びました。
このケースが示すように(倫理的に正しいかどうかは別にして)、「体重・体格別の運賃」に関して、航空会社や乗客は様々な意見を主張してきました。
では、体のサイズや肥満に対する社会運動が活発になっている現代において、「体重別運賃」のアイデアは、今後受け入れられていくのでしょうか。
こうした疑問に答えるため、最近、アメリカのニューハンプシャー大学(UNH)に所属するマルクス・シュッカート氏ら研究チームは、「体重別運賃」に対する世論調査を行いました。
アメリカの航空旅行者1012人に以下の運賃システムに関する意見を尋ねたのです。
- 標準ポリシー:全ての乗客が均一の料金を支払う
- しきい値ポリシー:設定された体重「160ポンド(72.6kg)」を超える乗客に追加料金が発生する
- 体重別ポリシー:体重と手荷物の合計重量に基づき運賃が決定される
その結果、全体としては標準ポリシーが最も受け入れられていました。
また研究チームの予想通り、体重が軽い人と重い人では回答の傾向が大きく異なりました。
例えば、体重が160ポンド(72.6kg)未満の人は、その71.7%が「しきい値ポリシー」か「体重別ポリシー」を受け入れましたが、体重が160ポンド以上の人の受け入れ率は49.8%でした。
一方で、今回の研究では、回答者の年齢によっても差が生じました。
18~35歳の回答者では、66歳以上の回答者に比べて、体重ベースの運賃設定の受け入れ率が20%高かったのです。
SNSからファット・アクセプタンス運動を頻繁に目にしている若者たちの方が、体重ベースの運賃を受け入れているというのは、興味深いことです。
もしかしたら若者たちは、メディアで話題になっている極端な見方よりも、健康や環境に対する意識の方が強いのかもしれません。
いずれにせよ、シュッカート氏は、若い旅行者がこのような施策を受け入れていることを「心強い傾向」だと述べており、「彼らの前向きな見方が、よりオープンな議論に繋がる」と続けています。
今回の研究は、今後、世界で「体重別運賃」が採用されていく可能性をいくらか示しつつ、最近過激化しつつある「外見に対する社会運動」の現状に一石を投じるものとなりました。
過度な肥満は健康を害しますが、果たしてこの健康問題を体重別運賃の施策と結び付けるべきでしょうか。
また、そのような施策は偏見を助長するものでしょうか。それとも、「個々に応じた料金」という意味で公平な施策でしょうか。
揺れ動く社会で、今後も議論は続きそうです。
デブは2席取れ。
12時間肘おきオーバーしてきてトイレにも立てない状況を経験したので賛成。ノイキャンしてもうるさいからいびき防止ギア代も加算してほしいくらい