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チップを支払うときの圧力の強さで、再来店率が変わる / Credit:Canva
psychology

日本人には理解しづらい「チップ制度」実際海外の人も圧を感じて嫌がっていた

2025.02.12 11:30:24 Wednesday

海外旅行に行くと、なじみのないチップ文化に困惑するかもしれません。

最近ではデジタル式に移行しており、カフェやレストランで会計時に「チップをどうするか」タッチパネルで尋ねられます。

こうしたチップ文化は、実は店の売り上げに影響を与えているかもしれません。

BIノルウェービジネススクール(BI Norwegian Business School)のナサン・B・ウォーレン(Nathan B. Warren)氏らによる研究が、この問題について調査を行いました。

この研究では、「チップの圧力」が顧客の行動にどのような影響を与えるかを分析し、店員が見ている状況では、顧客が再び訪れる確率が下がることが明らかになりました。

この研究の詳細は、2024年10月9日付の『Journal of Business Research』誌に掲載されています。

Tip pressure might work in the moment, but customers are less likely to return https://theconversation.com/tip-pressure-might-work-in-the-moment-but-customers-are-less-likely-to-return-242089
Tipping privacy: The detrimental impact of observation on non-tip responses https://doi.org/10.1016/j.jbusres.2024.115008

チップ文化の実態とデジタル化で変わるプレッシャー

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サービスに対する感謝を示す「チップ」 / Credit:Canva

チップ文化は、特にアメリカを中心とする多くの国で根付いており、サービス業における重要な経済システムの一部となっています。

レストラン、タクシー、ホテルなどでは、従業員の基本給が低く設定されており、チップが収入の大部分を占めることも珍しくありません。

例えば、アメリカのレストランでは、ウェイターの時給は最低賃金よりも低いことが多く、その分をチップで補う仕組みになっています。

一方で、ヨーロッパの多くの国では、チップはサービス料としてあらかじめ料金に含まれている場合があります。

日本でもチップは不要です。

本来、チップは「良いサービスに対する感謝の気持ち」として渡されるものでした。

しかし、最近のデジタル決済の普及により、会計時にタッチパネルでチップ額を選ばされるケースが増え、顧客が「強制されている」と感じることが多くなっています。

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最近では、デジタル端末でチップを支払うよう要求されることが増えている / Credit:Nathan B. Warren(BI Norwegian Business School)et al., Journal of Business Research(2024)

例えば、カフェでコーヒーを1杯買うだけでも、タッチパネルに「チップを選択してください」と表示され、15%、18%、20%の選択肢が示されることがあります。

中には「チップなし」の選択肢が目立たない形で配置されており、心理的に押しづらい設計になっていることもあります。

また、レジの店員が目の前で操作を待っている状況では、顧客は断りにくさを感じやすくなり、予定していなかったチップを支払ってしまうケースも多く報告されています。

特に、ハンドヘルドPOS端末(店員が持つ携帯型の決済端末)では、店員が目の前で操作するため、顧客は「見られている」というプレッシャーを感じやすくなります。

一方、カウンタートップPOS(レジに固定された端末)では、店員の視線が直接及ばないため、比較的自由にチップを選べる状況になります。

このような違いが、顧客の心理や店舗の売上にどのような影響を与えるのかについて、研究が行われました。

「チップを払うように」という無言の圧力は、果たして顧客にどんな影響を与えるのでしょうか。

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