カラフルな熱水泉が見られるイエローストーン国立公園
カラフルな熱水泉が見られるイエローストーン国立公園 / Credit: Wikimedia Commons
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落ちたら溶ける!危険たっぷりなイエローストーン公園の熱水泉 (2/2)

2025.03.08 21:00:16 Saturday

前ページ転落した人が溶けてなくなる泉

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イエローストーンにはどうしてそんなに危険な泉があるのか

酸性なのは熱水泉だけではなく、間欠泉も気を付けなければなりません。イエローストーン国立公園で湧き上がってくる熱水は酸性のものが多いのです。

何故でしょう?

それは地中から硫酸が熱水とともに地上へあがってくることによります。

では、その硫酸はどこから?

実はイエローストーン国立公園は世界で1、2を争うほど噴火したらヤバいスーパーボルケーノ、つまり、巨大カルデラの上にある国立公園だからです。約9000平方キロメートルという広い国立公園がカルデラの真上にあるわけです。

イエローストーン国立公園の地下には世界最大といわれるマグマだまりがあり、マントルがゆっくり上昇してくることによるホットプルームからマグマが供給され続けています。

そのガスが熱水に溶けて上がってくるんですね。

イエローストーン国立公園の下にはホットプルームからマグマが供給され続けているマグマだまりがある
イエローストーン国立公園の下にはホットプルームからマグマが供給され続けているマグマだまりがある / Credit: Wikimedia Commons

間欠泉や綺麗な熱水泉の秘密がこれです。

イエローストーン国立公園の地下にあるマグマによって地面を押し上げる圧力は増しており、イエローストーンの地面は年に2.5cm程度隆起しています。

マグマだまりは地面の奥深くにあって見えませんが、実は巨大なマグマだまりの上にあるのがイエローストーン国立公園なので、そんな恐ろしいものの上で、ラフティングしながら大はしゃぎしたりしているわけです。

ところで、イエローストーン国立公園の熱水泉は大抵綺麗な色をしていますね。それが観光客を惹きつけてもいます。どうしてこんなに綺麗なのでしょうか?

実はこれもマグマに関係があります。

イエローストーン国立公園は巨大なマグマだまりの上にあるため、熱水を噴き上げる間欠泉や熱水泉があることは既に述べました。

綺麗な色はこの熱水がポイントです。

イエローストーン国立公園の熱水泉には、極限環境微生物の一種、好熱菌や超好熱菌が住んでいるのです。

これらの菌は高温が大好きで、温泉や熱水域などに棲息しており、その温度によって棲息する菌が異なります。菌ごとにコロニーの色が変わるため、イエローストーンの熱水泉はカラフルで綺麗な色に見えるというわけです。

イエローストーン国立公園のシンボルのひとつともいえるグランド・プリズマティック・スプリングでは、光をプリズムで分解したかのように様々な色が見られます。

熱水泉の温度によって住む菌が異なるためカラフルに見える
熱水泉の温度によって住む菌が異なるためカラフルに見える / Credit: Wikimedia Commons

温度が高い方から順に 青→緑→黄→オレンジ→赤→茶で、青は70℃以上でほぼ無菌。70℃ぐらいまでが緑、60℃ぐらいまでが黄色、45℃ぐらいからがオレンジ、45℃ぐらいまでが赤、45℃ぐらいまでが茶色です。

熱水泉は色をみれば、だいたいの温度がわかりそうですね。しかし、こんな熱い温度の中でも生きていられるなんて不思議です。

イエローストーン国立公園の地下にあるマグマだまりにはマグマが供給され続けています。ホットスポットがあるからです。

ホットスポット自体は動きませんが、イエローストーン国立公園は北アメリカプレートに乗って南西方向に1年間に約4センチメートル移動しています。イエローストーン国立公園がホットスポットから離れれば、元あった間欠泉も熱水泉もなくなるということになります。

ハワイがプレートの動きに乗って、いずれ太平洋に沈むのと似ていますね。

自然景観だけでなく、バイソンのような野生動物も生息しているのが魅力
自然景観だけでなく、バイソンのような野生動物も生息しているのが魅力 / Credit: Wikimedia Commons

イエローストーン国立公園はその絶景で人気の国立公園ですが、熱水泉による事故も多く、これまで20人以上が主に重度の火傷で亡くなっています。これには危険がわからず遊歩道から飛び出してしまった幼児も含まれます。

同様に熱水泉を理解せずに飛び込んだ愛犬を助けようとして全身に重度の火傷を負った人もいて、立ち入り禁止区域でなくても十分危険な場所といえます。

火山や火山地帯は絶景や温泉などの恩恵を与えてくれる反面、危険な成分の熱水泉だけでなく、火山ガスの危険も伴います。

日本では2025年2月の大雪の日、温泉の源泉を管理していた人たちが、くぼ地に溜まった硫化水素を吸って亡くなった痛ましい事故があります。普段より多い積雪というような状況の違いが思わぬ事故を生むこともあります。

また、2022年、那須湯本温泉の殺生石のしめ縄が切れ、石が割れた現場でイノシシ8頭が死亡しているのが見つかってニュースとなったこともありました。殺生石が割れたことで不吉な感じを抱いた人も多かったのですが、イノシシの死因はガスでした。

火山は温泉は絶景などの恩恵を与えてくれる一方、危険も隣り合わせ
火山は温泉は絶景などの恩恵を与えてくれる一方、危険も隣り合わせ / Credit: Wikimedia Commons

イノシシは人間より低いところに頭があるため、人間より先に有害な火山ガスを吸ってしまったのです。そこは観光名所ですが、ガスの噴出が多い時は立ち入り禁止になることもあります。

イエローストーン国立公園は、破局噴火が起きないか監視されている巨大カルデラの上にあります。極端な自然のある所にしかない絶景が見られる反面、それは危険と背中合わせです。

イエローストーンは生きています。遊歩道付近で新たに熱水が噴き出して観光客が火傷した事故も起きているので、立ち入り禁止区域へ入り込むのは危険過ぎます。絶対にやめましょう。

モーニング・グローリー(アサガオ)という名の熱水泉。アサガオのような深いブルーだったものが観光客が物投入れる物で温度が下がり、色が変わったという。心無い自然破壊はやめたい
モーニング・グローリー(アサガオ)という名の熱水泉。アサガオのような深いブルーだったものが観光客が物投入れる物で温度が下がり、色が変わったという。心無い自然破壊はやめたい / Credit: Wikimedia Commons

ちなみにイエローストーンで一番最近のカルデラ噴火は64万年前。イエローストーンは60~70万年周期で噴火しているため近いうち(数万年?)に噴火するのではとみられています。

もし噴火すると大変なことになるので、今からマグマを冷やしはじめてはという案も出ています。

もしイエローストーンが巨大カルデラ噴火を起こしたらどう大変なことになるか気になる人はぜひ、NHKとイギリスが共同制作したドラマ『スーパーボルケーノ』を見てみるといいかもしれません。

イエローストーン国立公園の下には3つのカルデラがある
イエローストーン国立公園の下には3つのカルデラがある / Credit: Wikimedia Commons

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