なぜ「噛むこと」が脳に良いのか?
私たちは食事のたびに食べ物を噛んでいますが、これが脳にどのような影響を与えているのか、考えたことがあるでしょうか。
実はこれまでの研究で、咀嚼(そしゃく)は脳の血流を増やし、認知機能を高める可能性があることが示唆されてきました。
ある研究では、よく噛む人ほど認知機能が高く、高齢者のように歯が弱くなって噛む力が低下すると認知機能も衰えやすくなることが報告されているのです。
しかし「噛むこと」がどのようなメカニズムで脳に良い作用を与えるのかは、はっきりと解明されていませんでした。
そこで今回の研究では、噛むことが脳の「酸化ストレス」にどのような影響を与えるかに注目しました。

酸化ストレスとは?
私たちの脳は常に酸素を使って活動していますが、その過程で「活性酸素」という物質が発生します。
活性酸素は、脳細胞を傷つける「酸化ストレス」を引き起こし、認知機能の低下や老化の原因になるのです。
しかし脳はこの酸化ストレスから自らを守るために、「グルタチオン」という抗酸化物質を活用します。
グルタチオンは、脳のボディーガードのような役割を果たし、有害な活性酸素を中和する働きを持っています。
つまり、このグルタチオンのレベルを上げることができれば、脳の健康を維持し、記憶力の向上にもつながる可能性があるわけです。
そして研究チームは新たな実験で、木の棒を噛むとグルタチオンのレベルが上昇することを発見しました。