肉食動物なのに草食?パンダはなぜ竹好きなのか?
通常、肉食目に分類される動物は短い腸と強力な消化液を持ち、効率的に動物性タンパク質を分解します。
しかし、パンダの消化器官はライオンやトラと似ているにもかかわらず、主食は竹です。
この矛盾については、これまで味覚の変化や腸内細菌の適応、代謝の特殊化などが指摘されてきました。
例えば、パンダはうま味受容体(TAS1R1)が機能しないため、肉のうま味を感じにくいことが分かっています。
また、竹を消化するためのセルラーゼ(植物繊維を分解する酵素)を自身では作れず、腸内細菌に依存していることも知られています。

ではなぜ、パンダは好んで竹を食べるのでしょうか。
研究チームは今回、miRNA(マイクロRNA)に着目し、その原因を探ることにしました。
miRNAは、遺伝子の発現を制御する重要な役割を果たしています。
通常、mRNA(メッセンジャーRNA)に結合し、その翻訳を抑制することで、特定のタンパク質の生成を調整します。
近年の研究では、植物由来のmiRNAが動物の体内に取り込まれ、遺伝子の制御に影響を与える可能性があることが明らかになっています。
今回の研究では、中国の保護施設で飼育されている7頭のジャイアントパンダ(生体のメス3頭、成体のオス3頭、若いメス1頭)から血液を採取し、そこに含まれるmiRNAの種類と量を特定しました。
また、パンダが摂取する竹の異なる部位(葉、茎、若芽)からもRNAを抽出し、それらのmiRNAプロファイルを比較しました。
そして竹由来のmiRNAがパンダの遺伝子発現にどのように影響を与えるのかを予測しました。