降格が1人のエンジニアに恨みと狂気を植え付ける
ある日突然、ある会社の世界中の従業員がシステムにアクセスできなくなりました。
この前代未聞のシステム障害は外部からのハッカー攻撃ではなく、社内のエンジニアによる報復行為でした。
なぜ、このような事件が生じたのでしょうか。
犯人は、アメリカ・オハイオ州のEaton Corporationで働いていたデイビス・ルー氏です。
彼は2007年11月から2019年10月まで、Eatonのオハイオ州ビーチウッド事業所でソフトウェア開発者として勤務していました。

Eatonは電力管理装置の分野で世界的な企業ですが、2018年の企業再編によりルー氏の役職が降格され、職務権限も大幅に制限されました。
この降格に納得がいかず、強い不満を抱いていたルー氏は、約1年をかけてシステム破壊用のコードを開発し、退職後に自動的に発動するキルスイッチを仕込みました。
このキルスイッチは、ルー氏のユーザーアカウントが無効化されると、会社のシステムがクラッシュするよう設計されていたのです。
そして2019年9月9日、ルーの退職と同時にキルスイッチが発動しました。
ルーが仕掛けたコードは、サーバーの処理能力を意図的に圧迫し、システムをクラッシュさせました。
世界中の数千人の従業員がシステムにログインできなくなり、業務が完全に停止する事態になりました。