人間に特有の「言語」はいつ誕生したのか?
私たちは日常的に言葉を使っていますが、人類が最初に言語を話し始めた瞬間を想像したことはあるでしょうか?
「こんにちは」「ありがとう」「助けて」
最初の言葉がどんな発音で、何を意味したのかはわかりません。
これまで、言語の起源については多くの議論がありました。
現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生したのは約20〜30万年前のこと。
現生人類に特有の言語能力が進化したのはそれ以降のことになりますが、いつどのように生まれたのかについては、いまだ決定的な証拠が見つかっていません。
言語の起源は化石のように物として残ることはないので、調査することが極めて難しいのです。

こうした背景の中、研究チームは少し発想を変えて、言語が誕生した時期を探ることにしました。
「その論理は非常にシンプルだ」と研究者は話します。
彼らによると「地球上のあらゆる人口集団は人間に特有の言語を持っており、すべての言語は互いに何かしらの関連性を持っている」といいます。
要は、人間の言語にのみ共通する「種」のようなものですね。
それは例えば、霊長類やその他の動物が発する特定の鳴き声とは違い、さまざまな「語彙」と「文法」を組み合わせて、無限の表現を生み出している点などです。
「人間の言語は質的に他の動物の発話と異なり、ありとあらゆる単語の組み合わせによって、非常に複雑なシステムを作り上げている」と研究者は指摘します。
こうした人間に特有の言語能力の基盤は、最初期の現生人類たちが世界各地に広がる以前に共有していたものと研究者は予想します。
そして人類が世界中に拡散する中で、その言語能力の基盤を種として、あらゆる種類の言語を独自に進化させていったと考えられるのです。
ここから研究者らは「現生人類が最初に世界各地に拡散し、遺伝的に分岐し始めた時期を特定できれば、少なくともその時期までには人間に特有の言語能力が誕生していたことがわかる」と説明します。
そこで研究チームは今回、大規模な遺伝子データから、現生人類が最初に分岐し始めた時期を調査しました。