約8000キロの海を漂流物に乗って渡っていた⁈
研究チームは、フィジーのイグアナの起源を探るため、世界中の博物館に保存されているイグアナの標本からDNAを採取しました。
具体的には、以下のような調査をしています。
・200体以上のイグアナ標本のDNA解析
・4000以上の遺伝子を比較
・系統樹を作成し、進化の分岐時期を特定
その結果、フィジーのイグアナとサバクイグアナが遺伝的に最も近縁であり、両者は約3100万年前に共通の祖先から分岐していたことが判明しました。
また、フィジーのイグアナが到達した時期と、フィジー諸島が海から隆起して誕生した時期がほとんど一致していることもわかりました。
つまり、フィジーのイグアナは新しく生まれた島々に偶然漂着し、そのまま定住した可能性が高いのです。
では、どうやってこの長い距離を漂流したのでしょうか?

研究チームは、イグアナが「流木いかだ」に乗って漂流した可能性があると考えています。
例えば、次のような漂流プロセスが考えられています。
・巨大なサイクロンや嵐で倒れた木々に乗って海に流された
・イグアナは飢えや渇きに強く、数カ月間の漂流に耐えられた
・海上では、流木に生えていた葉っぱなどが餌になった可能性がある
特にサバクイグアナは乾燥に強く、長期間の食糧不足にも耐えられる特性を持っています。
そのため、8000キロという途方もない距離を漂流することも可能だったと考えられるのです。
これまで、カリブ海のイグアナが短距離を漂流して別の島にたどり着いた例は報告されていました。
しかし、これほど長距離の漂流移動が確認されたのは今回が初めてであり、これは「陸上動物による史上最長の大洋横断移動の証拠である」と研究者は話しています。

この結果を受けて、研究主任の一人であるジミー・マグワイア(Jimmy McGuire)氏はこう述べています。
「イグアナが北アメリカから直接フィジーに到達したなんて、とても信じがたい話でした。
それだけでなく、私たちの研究は、現在フィジーが存在する場所に陸地が現れるとほぼ同時に、これらのイグアナがそこに到着した可能性を示唆しています。
移動の正確な時期はともかく、この出来事自体が驚異的なのです」
フィジーのイグアナは様々な偶然が重なって誕生した奇跡的な種であると考えられます。
しかし不幸にも、フィジーのイグアナは現在、生息地の喪失やペット市場への密輸などで絶滅の危機に瀕しています。
研究チームは今後、フィジーのイグアナの保護活動を進めるためにも、調査を続けていく予定です。