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なぜ生ゴミの臭いは嫌なのに、ガソリンの匂いは嫌じゃないのか?─進化と脳の不思議な臭覚プログラム (2/2)

2025.03.29 11:30:13 Saturday

前ページ腐敗臭に対する"死に関連した回避"の本能

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ガソリンの匂いが“心地よい”理由

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では反対に、ガソリンやマッチ、焚き火や新車の香りなどには、なぜ嫌悪感がそれほどないのでしょう?

こちらも科学的に見ると、実は体に悪い化学物質がたくさん含まれています。 ガソリンに含まれるベンゼンやトルエンなどは、長時間吸えばめまいや吐き気を引き起こしますし、発がん性の疑いも指摘されています。

にもかかわらず「ちょっと好き」と感じてしまう人は多くいます。

その理由は、これらの匂いが人類にとって“比較的新しいリスク”だからと解釈することができます。

腐敗臭のようなリスクは何百万年も前から存在し、私たちの遺伝子に「絶対に避けるべし!」という命令が刻み込まれてきました。

一方で、ガソリンや人工的な化学物質が登場したのは、せいぜいここ100年ほどのことです。 これは進化のスピードで言えば、人間の本能がまだ“危険信号”として登録していない状態と言えます。

さらに、人類にとって“火”の匂いは特別な意味を持っています。 焚き火、焼き肉、炊き立てのごはん──こうした火を使った匂いは、安全で温かく、食事の時間や家族のぬくもりを連想させます。

人類は焚き火に安心感を覚えやすい/Credit:canva

そのため、燃焼系の香りに対しては「これは悪い匂いではない」というポジティブな印象が形成されやすいのです。

また、ガソリンやタバコ、香水などに含まれる“揮発性有機化合物”は、脳内の「報酬系」を刺激することもあり、人によっては少し陶酔感のある快感を覚えることもあります。

もちろん、それが健康に良いかは別の問題。 むしろ、こうした「快感」と「実害」がズレていることこそが、現代の臭覚の“バグ”なのかもしれません。

嗅覚の印象は時代に追いついていない

人間の五感の中で、嗅覚はもっとも古い感覚だと言われています。

脳の中でも“進化的に古い領域”が臭いを処理していることから、臭覚は「原始の脳と直結している感覚」とも呼ばれます。

だからこそ、生ゴミの臭いに顔をしかめ、ガソリンの匂いにうっとりしてしまうという現象も、理屈ではなく進化で刷り込まれた感覚の結果なのです。

もしあなたが次に生ゴミの臭いに思わず顔をしかめたら、「ああ、人類が進化がこの臭いを避けさせるんだな」と思い出してみてください。

そして、ガソリンの匂いを心地よく感じてしまったら……ちょっとだけ鼻を遠ざけておきましょう。 進化のアップデートは、まだそこまで追いついていないかもしれないのです。

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なぜ生ゴミの臭いは嫌なのに、ガソリンの匂いは嫌じゃないのか?─進化と脳の不思議な臭覚プログラム (2/2)のコメント

ゲスト

ナゾロジーの他の記事で
ガソリンはベンゼンに中毒性があり、脳に多幸感を与えるからと書いてありましたが
ナゾロジー内で意見が違うのは仕様なのでしょうか?

ゲスト

「ガソリンに含まれるベンゼンやトルエンなどは、長時間吸えばめまいや吐き気を引き起こしますし、発がん性の疑いも指摘されています。」
とここには書いてあるが、一方で
「ガソリンに含まれる化合物はすべて、人体に無害な濃度でコントロールされている」
と2年半前の記事には↓書いてある。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/114299
この2つは完全に矛盾している。どういう事だよ?

ゲスト

矛盾した論文がでるのは科学の世界ではしばしばあること
ナゾロジーの編集者は何人もいるしそこまで目くじら立てるものじゃない

ゲスト

人類がガソリンの匂いを危険だと感じるよう遺伝子レベルで進化するには、ガソリンをいい匂いだと感じてしまう人たちが病気になっても治療されることもなく、子孫を残せずに絶滅しなくてはいけない。そんなことは起こりそうもないな。

ゲスト

ナゾロジーのライターの皆さん、最近細かい指摘で息苦しい世の中になってきたことに関する論文があれば記事にしてください。

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