日本人は自由主義より権威主義的なストーリーのほうに説得力を感じてしまう
日本人は自由主義より権威主義的なストーリーのほうに説得力を感じてしまう / Credit:Canva
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日本人は自由主義より権威主義的なストーリーのほうに説得力を感じてしまう (2/3)

2025.03.25 18:00:30 Tuesday

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日本人の心は自由主義よりも権威主義に魅力を感じる

権威主義国家の情報戦と日本への影響
権威主義国家の情報戦と日本への影響 / Credit:Canva

日本人は他国からの権威主義的なストーリーやプロパガンダに弱いのか?

それとも強い免疫力を備えているのか?

疑問を解明すべく研究者たちは調査を行うことにしました。

調査対象は日本全国の幅広い年齢層で、合計約2,500人が参加しており、男女比や地域分布も国勢データに近づくように工夫されています。

Study 1:多彩なテーマでの比較

最初の実験(Study 1)では、研究者たちは一度に12のトピックを扱うという大胆なアプローチを取りました。

中国ロシアが関連する政治・外交問題はもちろん、アメリカ国内の社会問題や日本の政治課題など、多岐にわたるテーマです。

そのうえで、それぞれのトピックに対して「権威主義的な主張を押し出すストーリー」と「リベラルな視点に基づくストーリー」を用意し、参加者をランダムにグループ分けして提示しました。

ここで注目されるのは、ストーリーの出所を明示するかどうかが条件によって異なる点です。

たとえば「これは中国政府の公式見解です」と示す場合と、あえてソースをぼかす場合とで、説得力がどう変わるかも同時に検証されています。

結果として、「権威主義を擁護するストーリー」を提示されたグループは、民主主義を批判的に見る方向に意見が動く傾向が強まりました。

一方、「リベラルな視点のストーリー」を読んだグループは、予想どおり民主主義的な立場を支持するようになりました。

ただし、ストーリーの出所が権威主義国家だと明言されても、説得効果が大きく下がらないことが示された点は意外といえます。

Study 2:二つのナラティブがぶつかるとき

続く追加実験(Study 2)では、リベラルなストーリーと権威主義的なストーリーを同時に提示して、現実のネット環境に近い複雑な状況を再現しました。

さらに「どちらのストーリーを先に見せるか」といった提示順もランダムに変化させ、参加者がどの程度どちらの主張を受け入れるかを観察しています。

結果として、二つのストーリーを同時に見せられると全体としては互いの効果が相殺される傾向が見られました。

しかし、後から提示された権威主義的ストーリーが強く残るパターンも確認されています。

リベラルな主張で「免疫」がついているはずの人でも、あとから現れた権威主義的な物語に意外と揺さぶられるのです。

また、政治リテラシーが高い層や、陰謀論への親和性が低い層でさえ、その影響から完全に免れられるわけではありませんでした。

なぜこの研究が革新的なのか?

まず、一度の研究で多彩なトピックを扱ったり、ストーリーの出所や提示順を細かく変えたりといった手法により、SNS時代さながらの複雑な情報環境をできるだけ再現した点が大きな特徴です。

また、日本という、中国やロシアに比較的近く、しかも戦後の民主化を経て「民主主義が当たり前」という社会意識が根づいた国で検証したことで、欧米だけでは見えなかった「権威主義的な情報の説得力の正体」に迫れたといえます。

さらに興味深いのは、政治知識が豊富な人ほどプロパガンダには強いという従来の想定を揺るがす結果が示されたことです。

むしろ知識量が多い人ほど、既存メディアや主流の主張に対する批判的視点は持ち合わせている一方、新たな視点で提示されたストーリーを“裏の裏”まで吟味しきれずに取り込んでしまう可能性があるのかもしれません。

こうした複数要因の分析を通じて、「誰がどんな情報に弱いのか」をより立体的にとらえたという点こそ、本研究の革新的な部分といえるでしょう。

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