クマムシも脱皮する? 節足動物・オンシフォラと繋がる意外な証拠

クマムシ(緩歩動物)、節足動物、そしてオンシフォラ(有爪動物:カギムシ)は、いずれもエクディソゾアの内部に位置し、さらに「パナルトプロダ(Panarthropoda)」という大きなくくりに含まれる動物群とされています。
まず共通する特徴が「脱皮」で、これは成長時に体表を覆う外皮(クチクラ)を一度脱ぎ捨て、新しい外皮を形成するという性質です。
昆虫やクモのような節足動物は硬い外骨格を脱ぎ替えるイメージが強いかもしれませんが、クマムシも顕微鏡で観察すると、やはり成長段階で古いクチクラを脱ぎ捨てていることが確認されており、共通の祖先から受け継いだ“脱皮性”の痕跡がしっかりと残っているのです。
また、発生段階や遺伝子レベルでも多くの共通点が認められます。たとえば、体の前後を決めるHox遺伝子群や、体節形成・細胞分化を制御するシグナル伝達経路(Wnt、Notchなど)という「発生プログラムの基本ツールキット」を共有しているのです。
さらに、化石生物として有名なHallucigenia(ハルキゲニア)やAysheaia(アイシア)などの「ロボポディアン」と呼ばれる柔軟な体と短い脚をもつ生物を調べてみると、クマムシ・オンシフォラ・節足動物の共通祖先の姿をうかがわせる形質が見つかっています。
こうした遺伝子や形態的な類似は、地上や水中、森林など、多岐にわたる環境に適応してきたこれら3グループが、実は同じ“脱皮”という進化的履歴を共有する仲間であることを示すものです。
極限環境に強いクマムシ、粘着液を射出して獲物を捕らえるオンシフォラ、そして昆虫や甲殻類など膨大なバリエーションを誇る節足動物は、ぱっと見ではかなり異なるように思えますが、こうして共通の祖先から分かれた証拠を並べると、それぞれの多様性が深まった進化の軌跡がよりドラマチックに感じられます。