昆虫よりも近い!?クマムシの親戚は“有爪動物”だった
クマムシ(緩歩動物)といえば、しばしば虫やクモといった節足動物の一種と誤解されがちですが、実は分子系統解析を総合すると、オンシフォラ(有爪動物)のほうがより近縁だとする説が有力です。支えとなるのが、先述の「タクトポダ(Tactopoda)仮説」。
クマムシとオンシフォラが先に分岐し、その後になって節足動物が大型化と多様化の道を進んだと考えられています。
クマムシとオンシフォラには節足動物とは異なる相似点も複数報告されています。
たとえば、胚発生の初期段階や、体節形成を制御する遺伝子の発現パターンが比較的類似しており、両者がパナルトプロダの中でも近い位置にあることを示唆しているのです。
これに対して、節足動物は外骨格や関節構造の発達など、クマムシやオンシフォラからは遠ざかった形質を多く獲得してきました。
昆虫やクモなどの節足動物は身近で目につきやすい一方、オンシフォラは主に熱帯・亜熱帯の森林に生息し、体長が数センチに及ぶ柔らかい“ベルベットワーム”のような姿をしています。日本では自然分布がほとんど報告されていないため、一般にはあまり馴染みがない生き物です。
しかし、「有爪動物のほうが実はクマムシに近縁だった」という事実は、進化の意外性を象徴する話題でもあり、さらにオンシフォラは独特の粘着液を射出して獲物を捕らえる狩りの方法など、とても興味深い生態を持っています。
クマムシとオンシフォラの意外な関係を知れば知るほど、エクディソゾアという脱皮動物の多様性に驚かされることでしょう。