4000年の時を経て、復活した古代戦士
この研究の背景には「物言わぬ骨から、その人の人生を復元したい」という考古学者たちの願いがありました。
ただ骨を年代測定するだけでなく、その人の顔立ち、道具、体格や生活までをできる限り明らかにしたい─それは過去と現在をつなぐ「人間の物語」を浮かび上がらせる試みでもあります。
そこでチームは3D技術を駆使し、この古代戦士の顔や武具までを含めた全身を再構築することに挑みました。
400点以上の細かな出土品をすべて3Dスキャンし、骨格、盾、鎧、副葬品をデジタル化。
顔の復元には、ソ連の著名な人類学者ミハイル・ゲラシモフが開発した「頭蓋骨復顔法」をベースに、現代のフォトグラメトリ技術を組み合わせて使用しました。
盾はヘラジカなど大型動物の中空骨から作られており、接着剤を使って革の土台に貼り合わせていたと推定されています。
右側はげっ歯類による損傷があるものの、左側は良好に残っており、6枚の骨板には実際に矢じりが突き刺さったままの状態で発見されました。
また、身体の損傷(手足の骨折や関節の圧迫骨折)も、過酷な戦闘経験を物語っており、単なるハンターではなく、訓練を受けた「戦士」であったことが裏付けられました。
こうして復活を遂げたのが、こちらの姿です。

今回の復元によって、「4000年前の誰か」が単なる名前のない骨ではなく、表情を持つ“人”として私たちの前に立ち現れました。
今や、高度な技術と科学を組み合わせることで、私たちは時間を超えて過去の人々と「顔を合わせる」ことができるようになったのです。