天才高校生が自作のAIモデルを開発
宇宙望遠鏡によって日々観測される天体データは、もはや人の手で処理できるレベルを超えています。
NASAが2024年8月8日まで運用していた広視野赤外線探査機「NEOWISE」は、10年以上にわたって夜空をスキャンし続け、合計で約2000億件にもおよぶ天体の観測データを蓄積してきました。
しかしこれらの膨大なデータは十分に活用されておらず、その中には、未発見の変光天体(時間とともに明るさが変化する星)が数多く眠っていると考えられています。
それらをすべて確認するには膨大な時間がかかり、人力ではとても不可能です。
そこで立ち上がったのが、アメリカの高校に通うマシュー・パズさんでした。

彼は小学生の頃、母親に連れられてカリフォルニア工科大学の一般向け天体観望講座に参加して以来、天文学に興味を抱くようになりました。
それからAIや数学にも才能を発揮し、地域の教育プログラムで、中学生ながら大学レベルの数学や計算機科学を修得したといいます。
そして2022年の夏、パズさんはカリフォルニア工科大学(Caltech)の天体観測プログラムに参加し、膨大なNEOWISEのデータから未知の変光天体を見つけ出すAIモデルの開発に挑んだのです。

このプログラムでは、天文学者のデイビー・カークパトリック氏がパズさんのメンターを務めました。
「デイビーに出会えて本当に幸運でした」とパズさんは語ります。
「最初に話した日を覚えています。私は『この経験から論文を出したいと考えている』と話しました。6週間という短期間にしてはかなり大きな目標です。
しかし彼は止めませんでした。『よし、それについて話してみよう』と言ってくれました。
彼のおかげで、思う存分学べる環境がありました。私が科学者としてここまで成長できたのは、そのおかげだと思います」
パズさんはNEOWISEのデータに取り組むにあたり、機械学習や波形解析、さらには高速なフーリエ変換などの高度な技術を独学で学び、AIに取り入れました。
こうして誕生したのが、彼の開発したAIモデル「VARnet(ヴァーネット)」です。